バルサを脅かす1340億円超の負債 改革か、崩壊か…UEFAとの“危険な根比べ”
【英国発ニュースの“深層”】新加入アグエロの「世界一」発言が白々しく聞こえるカタルーニャ名門の窮状
UEFAチャンピオンズリーグ(CL)の決勝も終わり、欧州クラブサッカーの全日程が終わると、いつもなら一区切りがつき、今年であれば“さあEURO”という気分になるのだが、どうも今年はもやもやする。それはやはり、レアル・マドリード、バルセロナ、ユベントスの3クラブがUEFAとの徹底抗戦を宣言して、欧州スーパーリーグ(SL)騒動がきちんと終息していないからだ。
今朝方、英メディアのトップ記事はマンチェスター・シティのレジェンドとなったセルヒオ・アグエロのバルセロナ移籍発表だが、その見出しとなっているアルゼンチン人の「バルサは世界一のクラブ」という発言がどうも白々しく、逆に不安を煽る文句に聞こえる。
プレミアリーグでの10年間でアラン・シアラー、ウェイン・ルーニー、そしてアンディ・コールという、選手生命すべてをイングランド1部リーグに捧げた英国人3大FWに続く184ゴールを量産し、外国人選手としては最高位につけた。しかも1分あたりのゴール率は史上最高。さらには2020年1月13日に行われたアストン・ビラ戦で12回目のハットトリックを達成し、これは“神様”シアラーの「11回」を抑えて歴代1位に堂々躍り出て、その類稀なゴールマシンぶりを数字で証明した。
そんなアグエロが「自分のキャリアのステップアップ」と語って胸を張ったシティからのバルセロナ移籍だが、果たしてUEFAとチキンレース的な我慢比べに沈澱するカタルーニャクラブの現状は、プレミアでレジェンドとなったアルゼンチン人の言葉通りのものなのか。
残念ながら、その答えは「NO」と大文字で記さなければならない。
アグエロのバルセロナ移籍がトップニュースとなっている6月1日付の「BBC」電子版には、「欧州SL、次に何が起こるのか」との見出しで、今後の“レアル・バルセロナ・ユベントス対UEFA”の抗争がどう展開していくのか、サイモン・ストーン記者が展望を示している。
結論から言ってしまうと、ストーン記者はスペインとイタリアのクラブがCLの予選に参加する8月まで、3クラブの処分は「決定しないだろう」と予測している。
レアル、バルセロナ、ユベントスは「UEFAの執拗な強制を拒絶する」という強い語調で共同声明を発表しているが、同時に「サッカーを改革するか、もしくはサッカーの崩壊を目撃するか」というくだりも含ませており、“話し合い”を希望しているのは明らかだ。
森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。