「ヴェルディらしさとは何か?」 “緑の名門”出身の両監督、好対照なスタイルで激突
負けず嫌いを全開にして泥臭く戦うのも“ヴェルディの伝統”
その数字に関して、吉田監督はこうも言った。「パス数イコール勝敗の主導権ではない。ゴールの数を競い合うスポーツですから、チーム全体でどのように攻撃し、どのように守備をするか、ゴールを奪うか、それが大事です」と。事実、シュート数を見れば東京Vが8本に対し秋田は14本と倍近く、得点源とするCKも東京Vの1本に対して秋田が6本と、狙いの形には持ち込んでいたと言える。
つまりスコアやボール支配率といった数字に表れたほどの差は、両者にはなかった。試合後の永井監督は「我々と真逆のスタイルではあるが、サッカーおよび勝負ごとの原点、いわゆるバトルする、戦うところに非常にストロングがある」と秋田を評した。それもまた紛れもないヴェルディの、読売の伝統だと、永井監督は知っている。
東京Vの下部組織で育ち、ベガルタ仙台を経て2019年まで緑のユニフォームを着て現役を続けた田村直也は、かつて「ヴェルディらしさとは何か?」という筆者の問いに、「上手いヤツが頑張る、戦う」と答えた。日本サッカーリーグの末期からJリーグ草創期に、日本トップクラスの選手たちが負けず嫌いを全開にして泥臭く戦っていた、その結果として『圧倒して圧勝』という現象が生まれていたのは間違いない。
選手の総年俸と戦力が比例するとして、永井監督はJ2でも中位程度の戦力で『圧倒して圧勝』という現象を再現しようとしている。一方、多くは昨季J3で戦っていた選手たちを率いる吉田監督は、『戦う』という要素を煎じ詰めることでその戦力差を埋めようとしている。どちらが正しいということはなく、どちらも正しく、あるいはどちらも正解ではないのかもしれない。
強さとは何か? 緑の名門の血が流れる両指揮官の哲学がぶつかり合った、示唆に富む一戦だった。