「ヴェルディらしさとは何か?」 “緑の名門”出身の両監督、好対照なスタイルで激突

永井監督が選手に見せた黄金期の10番、ラモス瑠偉のプレー映像

 秋田戦で、東京Vのボール支配率は73%を記録した。ここまで極端な数字はなかなかお目にかかれない。実は、ボール支配率というのは高すぎても勝ちに結びつかない傾向にある。

 昨季の東京Vのデータで支配率が65%を超えたのは8試合あるが、勝敗は1勝3分4敗だ。70%超えは3試合で、2分1敗。高すぎるボール支配率というのは、相手にボールを持たされ、守備ブロックを崩せないままシュート数も少なく、ただ時間が過ぎていったという試合の結果として表れやすいのだ。逆に秋田は今季第3節のジェフユナイテッド千葉戦で、相手に71.3%のボール支配率を許しながら効率的に得点を重ね、2-0で勝利している。

 この試合への準備の過程で、永井監督はミーティングで選手たちにこう伝えていた。「ヴェルディの本当の強さは何か? みんな上手いプレーはできるかもしれないが、強さが足りない。ボールを持っても、ゴールを目指さなければ意味がない」

 そしてさらに、ヴェルディ黄金期の象徴である、ラモス瑠偉のプレー映像を見せた。緑の背番号10が、ライオンのように長髪を振り乱しながらゴールに迫り、叱咤しながら味方を操り、ボールを奪われたらスライディングして取り返す姿に、「選手たちは何かを感じ取ってくれたと思う」と指揮官は言う。

 確かにこの日の東京Vの選手は、上手さとともに強さも発揮した。序盤は秋田の前線からのプレスと最短距離でゴールを目指す攻撃の勢いに押され、さらには相手の得意とするセットプレー連発の流れから前半6分に先制点を奪われた。しかし「僕らのプレスのかけ方が相手にも分かって、ハメることができなくなってしまった」と秋田のFW中村亮太が振り返ったように、次第に東京Vが相手のプレスを空転させて敵陣深くに攻め込み始めると、同24分に同点に追いつく。

 東京Vの上手さと強さが噛み合っていたのは、ボールを握って相手を押し込んで試合を進め、ボールを失っても素早く守備へと切り替えて奪い返したところ。あるいは、「ロングボールをなるべくフリーで蹴らせないように」(FW山下諒也)プレッシャーをかけ、それでも飛んできたロングボールは武闘派DFンドカ・ボニフェイスと笑顔のDF若狭大志が弾き返し、中盤が球際で戦ってセカンドボールを回収したことだ。そして後半も優位に試合を進めた東京Vは、2点を挙げてゲームを終わらせる。「自分たちの強みを出せなかった」と、中村は唇を噛んだ。

 試合後の吉田監督は悔しさを露わに、「後半は守備を少し整理して奪いに行く回数と積極性を増した分、背後のスペースが空き、1対1の局面が多くなった。そこでしっかり守れていれば我々に勝機があった」と語った。面白いのは、そのやられた後半のほうが、秋田のボール支配率およびパス数が多かったことだ。終盤の攻撃は、言ってしまえば秋田らしくなかった。短いパスをつないで崩しにいき、東京Vの守備に引っかかってカウンターを浴びた。ボール支配率25%、パス数わずか68本だった前半のほうが、より秋田らしかった。

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