「まるでハリウッド映画のよう」 ポーランド人FWが達成、歴代最多41ゴールの価値
バイエルン幹部が断言「あと4、5年はトップレベルでプレーできるのは間違いない」
ドイツ代表監督のヨアヒム・レーブは、「今日のサッカーではゴールを決め続けることは以前よりも難しくなっている」と指摘していた。例えばブンデスリーガの記録を振り返ってみると、守備的戦術の発達とストライカーへの徹底的なハードマークも影響し、ゴール数が極端に減っていた時代もある。
ブンデスリーガでは1988-89シーズンのトーマス・アロフス(ケルン)とローランド・ボールファルト(バイエルン)、そして95-96シーズンのフレディ・ボビッチ(シュツットガルト)がそれぞれ17ゴールで得点王。レバンドフスキ自身、2018-19シーズンは22ゴール、13-14シーズンには20ゴールで得点王になっているのだ。
2000年以降に30ゴール以上が達成されたのは4シーズン。16-17シーズンのピエール=エメリク・オーバメヤン(現アーセナル)が31点、あとの3シーズンすべてがレバンドフスキだから、やはり凄い。
改めて、そう考えると昨今のレバンドフスキの得点力は何ものにも代えがたいものだ。バイエルン代表取締役カール=ハインツ・ルンメニゲは、ドイツメディア「SPORTBUZZER」のインタビューで「年間60ゴールをクラブのために決めてくれて、32歳で世界最優秀選手となった男を誰が手放すと思う? コンディションの良さは驚くべきほどだ。あと4、5年はトップレベルでプレーできるのは間違いない。ロベルトはまるでダイヤモンドのようだ」と、欧州トップクラブを牽制するかのように話していたのが印象的だ。
そして元バイエルン監督ユップ・ハインケスは、「キッカー」誌のコラムで次のように称えていた。
「かつてのゲルト・ミュラーもそうだが、レバンドフスキは尽きることのない野心で満ち溢れている。世界クラスの選手になるためには、特別な領域にある意志力と情熱と飽くなき向上心が欠かせない。レヴィはどんな時でもさらに成長しようとしている」
新たな歴史を築いた最終節の41得点目。ちょうどその日は、レバンドフスキの母イボーナさんの誕生日だった。レバンドフスキが16歳の時に父親は死去。それ以来、イボーナさんは1人で育て上げてきた。今お互いの胸に去来する思いはなんだろう。
「僕を助けてくれて、僕のすべての夢を本当にしてくれた女性へ。ハッピーバースデー」と、レバンドフスキはインスタグラムでお祝いのメッセージを綴っていた。加えて、ドイツサッカー史の偉大な記録を塗り替えるというプレゼント。母親にとって、これ以上のものはないではないか。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。