「まるでハリウッド映画のよう」 ポーランド人FWが達成、歴代最多41ゴールの価値
【ドイツ発コラム】レバンドフスキが最終節で、ミュラーの記録を更新するシーズン41ゴールを達成
ポーランドサッカー界にとっては、まるでワールドカップで優勝したかのような瞬間だった。
ブンデスリーガで5度得点王に輝き、2020年FIFA世界最優秀選手にも選出されたポーランド代表キャプテンのロベルト・レバンドフスキ。今季途中に怪我で離脱した時期もあるが、シーズン序盤からゴールを量産し続け、その数字は第33節フライブルク戦でついに40得点へ到達。1971-72シーズンにゲルト・ミュラーが達成した歴史的大記録に並び、最終節のアウクスブルク戦で1点を挙げることができたら、歴史に名を遺す偉業達成という状況だった。
そのアウクスブルク戦では、前半だけで5度のビッグチャンスがありながら、相手GKの好守などで決められないでいた。それだけにアディショナルタイムでレロイ・サネが放ったシュートのこぼれ球を拾い、冷静にゴールに流し込んだ時、ポーランドテレビ局の実況は感情を抑えることができずに叫び出したという。
「ロボット・ロベルト、メイドインポーランド! ワルシャワ生まれの子が、サッカー界の天空に輝く星となった!」
同じポーランド人ジャーナリストのミヒャエル・ポルは、次のようにコラムに綴った。
「記録を破った! 信じられないことだ。レヴィは最後の最後にこのゴールを決めたのだ。まるでハリウッド映画のシナリオのようだ。レヴィは最後まで戦い、歴史に名を刻むと僕らにはみんな分かっていたんだ。それもドイツの歴史にだ! ポーランド人がだ!」
ポーランドサッカー界のレジェンドであるツビグニエフ・ボニエクは、「我々はゲルト・ミュラーをリスペクトしている。それでも、もしレバンドフスキが記録を塗り替えることになったら、盛大に祝いたいさ。レバンドフスキの母親は16歳の頃から1人で育て上げたんだ。どれだけ誇りに思っていることだろう」と感慨深げに話した。
レバンドフスキを称賛する声は続く。バイエルンで長く活躍した元ドイツ代表FWマリオ・ゴメスと元ブラジル代表ジョバンニ・エウベル。ゴメスは「世界最高に完成度の高いFW」と称え、エウベルは「典型的なレバンドフスキゴールというのがないんだ。なんでもできるんだから。怪我さえなければあと4、5年はトップレベルでプレーできるだろうね。ACミランのズラタン・イブラヒモビッチを見てごらん。39歳でも凄い。レヴィもあれくらい長くプレーできる選手だと思う」と賛辞の言葉を並べる。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。