サッカーで尊い“意外性” 南野と三笘、GKを無力化する“アウトサイド”トリック
【識者コラム】ミャンマー戦で南野が技あり弾、GKにとって予測しにくいキック
ワールドカップ(W杯)アジア2次予選、日本代表が10-0で大勝したミャンマー戦の先制点は南野拓実だった。鎌田大地とのパス交換で抜け出して、得意の右足アウトサイドでGKの出際を抜いている。
南野は左足のシュートも上手いのだが、よく右足のアウトサイドでシュートしている。その時のタイミングもあるのだろうが、GKにとってかなり予測しにくいキックだ。
右足のアウトで蹴るということは、普通は右側へボールが飛んでいく。GKにとっては左側だ。ところが、南野のシュートは左側(GKの右側)へ飛んでいくのだ。これを至近距離でやられるとGKはまず逆をとられる。
川崎フロンターレの三笘薫も、このシュートをよく使っている。アウトサイドでのシュートの方向が通常とは逆だ。GKにとって予測とは反対にボールが飛んでいくから、防ぐのが難しい。
GKはボールが蹴られる瞬間まで両足を地面につけ、先に動かないのが基本と言われている。ただ、シュートコースを常に予測している。動くか動かないかはともかく、どこへシュートしてくるかの予測は持っている。シュートする選手の状態、特に体の向き、踏み込む足の方向、蹴り足の振り方は重要なヒントになる。
逆にシュートする側は、GKの予測を外してしまえばゴールの確率は上がる。南野や三笘のアウトサイドによるトリックを見破るのは至難の業だろう。
インサイドキックのトリックはかなり使われている。例えば、左寄りから右足でファーサイドを狙うと見せかけて、ニアサイドへ打つ。体を開いておいて、インパクトの瞬間に角度をつけて左方向へ蹴る。フランス代表のキリアン・ムバッペがこのシュートを得意としているが、この形は多くのアタッカーが使っている。
トゥキックのシュートもタイミングを予測しにくい。ジーコの兄、エドゥーも有名な選手だったが、足指を丸めておいてボールを突くシュートが得意だったそうだ。すごく指が痛くなりそうなキックだが、このトゥキックの威力が凄かったという。
たぶん、一番わけが分からなかったのが、メスト・エジルの叩きつけて浮かせるシュートだ。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。