強硬な名門3クラブ、近づく“最悪の結末” 負債額は数百億円…UEFAに徹底抗戦の背景
レアルのペレス会長は9クラブの撤退さえ認めていない
また誓約書のサインについては形式的なもので、面子の問題はあるのだろうが、それ自体、大問題とは思えない。
だから、欧州SL構想自体が非難の的となって完全に崩壊したこともあり、今週頭にUEFAが最後通告をしたことで、3クラブが渋々他の9クラブと同じ処罰を飲むという対応をして一件落着という筋書きかと思った。
ところがレアル、バルセロナ、ユベントスが選んだのは強硬な拒絶。100年以上の歴史を持つ(つまり100年以上にわたって欧州サッカー界に貢献してきたと言いたいのだろう)我々は、いかなる種類の強制、圧力に屈しない――とまでに、高らかな宣言をして、追放できるならしてみろという構えを見せている。
一方、欧州SLは創設メンバーに選ばれたごく一部のエリートクラブには“降格がない”フランチャイズ制で、もしもこのリーグを認めた場合、CLは即時崩壊だ。また欧州カップ戦への出場権争いの場となっていた各国リーグの戦いも、完全に無意味なものになる。
そうなればプレミアも崩壊だ。ビッグ6が真剣勝負する必要のないリーグ戦に、誰が現在のような放映権料を支払うのか。逆にすべての利権は欧州SLが吸い上げ、永久メンバー以外のすべての欧州クラブがその存在そのものの継続に影響するような大打撃を受ける。
そうしたビッグクラブの身勝手極まりない論理で発足した欧州SLを認めるわけにはいかない。
ちなみに英国では、サッカー発祥国が誇りとするプレミアを無価値なものにし、これまでの欧州サッカーの伝統も破壊させるものとして、SLに参加したクラブのサポーターたちも激怒。その余波で、マンチェスター・ユナイテッドとアーセナルでは、これまでのクラブ経営に不満があったこともあり、サポーターが大規模なオーナー交代運動にまで発展させ、騒動はいまだ継続中だ。
そんな、とてつもない大逆風が吹き荒れてアーセナル、チェルシー、リバプール、マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、そしてトッテナムのプレミア6クラブは、SL発足発表からわずか48時間で撤退を表明。アトレティコ・マドリード、ACミラン、インテルも間もなくそれに続いた。
ところがそんな激しい反発に遭い、SLが完全に死に体となっても、レアル、バルセロナ、ユベントスは「欧州SLはヨーロッパサッカーの改善を目指したもの」として撤退を拒否。それどころか、レアルのフロレンティーノ・ペレス会長は「今も契約は拘束力がある」として、9クラブの撤退さえ認めていない。
森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。