敵将ペップも「信じられないほど素晴らしい」と絶賛 イングランド17歳“超新星”とは?
攻撃面だけでなく守備面でのパフォーマンスにも高い評価
ドルトムントのミヒャエル・ツォルクSDは、「我々が示すことのできた確かな将来性がカギになった。ものすごいポテンシャルを持った選手で、これからのシーズンを一緒に成長していきたい。今現在、すでに驚くべきほど高い能力を持っている。ボールを持っている時も、相手がボールを持っている時もどちらのプレークオリティーも高く、強靭なメンタリティーも持っている」と獲得を喜んでいたが、とはいえ加入後すぐにここまでの活躍を見せるとは誰が想像していただろうか。
シーズン序盤から出場機会を得てはいた。ただ、そこまでの存在感を示すことはできないでいた。必死にプレーしているのは感じられるが、どんなプレーにも100%の意識を集中させてしまうため、空回りをしてしまうことが多かったのは否めない。一生懸命走ったがために、自分がいなければいけないスペースを空けてしまい、逆に相手にそこを使われたりということが起こってしまう。サッカーは自分1人の頑張りだけで、なんとかなるスポーツではない。
いつ、どこに、どのように集中して取り組むべきか。そうした集中調整能力はすぐに身につくものではない。様々な経験を積み重ねることで宿ってくる。フランクフルトでプレーする元日本代表MF長谷部誠が見せてくれるように、経験豊富なベテラン選手はそのあたりの駆け引きが非常に長けているからこそ、特別な存在となる。
だからこそ、若手選手には順応していくために時間が必要となるわけだが、そうした点で今のベリンガムはすでにプレーの整理ができているし、集中力をコントロールできているのが素晴らしい。
バーミンガム・シティで監督をしていたクロテは、「彼のポテンシャルにフタはない。天に触れることができる選手だ」と語っていたことがあるが、17歳ながらすでにプロフェッショナルな心構えを身につけており、栄養など体をケアすることにも丁寧に気を配っているのは印象的な話だ。
ドルトムントのセバスチャン・ケールSDは「パフォーマンスの安定感が素晴らしい。ジュードは正しい心構えを持っている。チームのために全力でプレーできる選手だ。今季ドルトムントにおける最初のシーズンとして、ここまでの成長ぶりに非常に満足している」と絶賛し、ドルトムントのエディン・テルジッチ監督は「非常に今好調だ。いつでも100%でプレーをする。守備でもどれだけ多くのボールを奪取したか。そしてオフェンスでどれだけ攻撃をけん引したか」と、その活躍ぶりに目を細めていた。
17歳の選手が毎試合、高いレベルのプレーをコンスタントに披露できているのは驚異的だ。イングランドサッカー協会は欧州選手権のメンバーを25日に発表予定だが、招集される可能性は十分にある。時期尚早ということはない。ビッグトーナメントでもぜひ見てみたい選手だ。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。