低迷アーセナルの救世主に? “3000億円超”買収オファーにサポーターが夢を抱く理由

アーセナルではオーナー交代が現実的か(写真はイメージです)【写真:Getty Images】
アーセナルではオーナー交代が現実的か(写真はイメージです)【写真:Getty Images】

【英国発ニュースの“深層”】揺れるアーセナル、「スポティファイ」のダニエル・エクCEOが買収に名乗り

 欧州スーパーリーグ(SL)騒動後、参加表明したいわゆるプレミアの“ビッグ6”の明暗が3対3にかなりはっきり分かれた。

 現在もサポーターの抗議の標的となっているのは、今月2日のリバプール戦を延期させたマンチェスター・ユナイテッド、トッテナム、そして今回のお題になるアーセナルだ。

 一方、比較的鎮静化しているのはチェルシー、リバプール、マンチェスター・シティ。この明暗の最大のポイントは、現在のオーナーシップになって「クラブの成績が良化したかどうか」だと思う。

 近年の優勝の順番で表記すると、チェルシー、シティ、リバプールの順となるが、3クラブの共通項は現在のオーナーになるまでクラブがリーグ優勝から数十年も遠ざかっていたこと。2004-05シーズンに優勝したチェルシーは50年間、2011-12シーズンのシティは44年間、そして2019-20シーズンのリバプールが30年間も、強豪の看板を掲げながら英1部リーグ優勝を果たせずにいた。

 一方、ユナイテッドは2013年にアレックス・ファーガソン監督が勇退してから低迷期に突入。トッテナムのサポーターは1960-61シーズンから優勝の美酒を味わっておらず、アーセナルもアーセン・ベンゲル監督が達成した2003-04シーズンのインビンシブルズ(無敗優勝)から17年が過ぎたうえに、渋い年俸提示で主力選手に逃げられるというイメージもついて、現在のオーナーに対する不満は膨張するばかりだ。

 そんな現状に対する不満が、今回のSL騒動をきっかけとして明らかな敵意に変わり、特にユナイテッドのグレイザー一家、そしてアーセナルのスタン・クロンケに対するオーナー交代の抗議運動が一気にヒートアップしている。

 特にアーセナルの場合は、“オーナー交代”が現実的な状況となっている。今をときめく音楽配信会社「Spotify(スポティファイ)」の創業者CEOであるダニエル・エク氏が、アーセナル買収に手を挙げたのだ。

 これはサポーターにとっては願ってもない僥倖だ。なぜなら38歳のビリオネアは「8歳から熱烈なアーセナルファンだ」と公言し、買収成功後にはティエリ・アンリ、パトリック・ヴィエラ、デニス・ベルカンプという無敗優勝チームのレジェンドたちを経営に参加させるという構想もぶち上げたからだ。

 しかも今回、エク氏本人がクロンケ・オーナーをはじめ、アーセナル関係者に対し「20億ポンド(約3180億円)の正式オファーを出した」と公表した。

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森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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