まるで温かい“家族”…レスターのFA杯初制覇に感激 超絶プレーを生んだ優勝への情熱
【英国発ニュースの“深層”】岡崎の古巣レスター、“5度目の正直”でFAカップ王者に輝く
レスターがFAカップ初優勝を果たした。1969年以来52年ぶりの決勝進出だったそうだ。1884年のクラブ創設以来、今回で5度目のファイナリストとなっていた。そしてまさに“5度目の正直”で、1871年に始まった世界最古のカップ戦を制することになった。
今回の決勝、チェルシーファンには申し訳ないが、私はレスターを応援した。“岡ちゃん”こと日本代表FW岡崎慎司(現ウエスカ)が2015-16シーズンから所属した4年間、文字通り、イングランド中部のレスターに通い続けた。その温かい、まさに家族的なクラブに触れて、スタッフや広報官とも友情が生まれていた。
テレビ中継を通してだが、心からそんな愛着あるレスターを応援した。伝統のカップ戦は「BBC」が放映した。司会を担当したのは、レスター出身で生粋のレスターサポーターであるギャリー・リネカー。試合前に「もしも優勝したら番組中でも泣くかもしれない」とツイッターで呟いていた。
そんなリネカーに率いられたおかげで、解説陣の優勝予想も、チェルシーOBのアシュリー・コールを除いて、アラン・シアラー、イアン・ライトが笑顔で“ギャリーの心意気に一票”とばかりに、レスターの勝利を予言した。
そうしたら本当にレスターが優勝した。後半18分、ベルギー代表MFユーリ・ティーレマンスが豪快に決めた25メートルのミドルで奪った決勝点は、まさしくスーパーゴール。GKカスパー・シュマイケルが昨季までの同僚DFベン・チルウェルのヘディングとイングランド代表MFメイソン・マウントが放った強烈なハーフボレーシュートを、これもまさしくスーパーセーブで止めた。
さらに岡崎在籍時の不動の主将センターバックだったDFウェズ・モーガンが守備固めで起用されたが、後半44分という土壇場で、チルウェルが至近距離から放ったクロスで生まれた混乱のなか、ボールをゴールに蹴り込みオウンゴールを与えてレスターファンに激痛が走った。しかし、このチェルシーの同点弾が、VARで取り消されるというドラマも生まれ、決勝に相応しい興奮を生み、素晴らしい試合となった。
しかし、試合後にもレスター優勝の勝利の美酒の味を格別にする、さらなる感激のシーンが生まれた。
森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。