チームを劇的に変える「魔法はない」 8戦未勝利の清水、見せつけられた名古屋との差

ロティーナ監督「1カ月や数カ月で埋まるような差ではない」

「充分チャンスはある。落ち着いてチャンスをものにしよう!」と後半へ送り出したミゲル・アンヘル・ロティーナ監督だったが、開始5分でその思惑も崩れてしまう。スカウティングで最も警戒していたはずのFWマテウスに左足のミドルシュートを決められ、終了間際の後半44分にも左足からの技ありシュートでダメ押しの3点目を決められた。思えば先制点のFKのキッカーもマテウスだったが、名古屋の良い部分ばかりが目立つ90分間で試合が終わってしまった。

 リーグ8戦未勝利(4分4敗)となった試合後の会見で、「今の順位差がそのまま内容の差にも出た試合だったが、この差を埋めるためにはどうすれば良いか?」とロティーナ監督に質問したが、「1カ月や数カ月で埋まるような差ではないと思う。日々努力してハードワークしていく。それ以外の“魔法”というものはないと思う」と話した。

 Jリーグで実績ある監督。そして日本代表クラスや他クラブの中心選手、海外リーグで活躍した外国籍選手を集めても、簡単にはチームは完成せずにそれだけでは勝てない。30年近い歴史を一足飛びに塗り替えることはできないということなのだろう。近年繰り返される「魔法使い」探しよりも、まずは足もとを固めることが今の清水には必要ではないだろうか。

 ただし、リーグ戦も残り3分の2。その差を埋めるための時間はあまり残されていない。2位名古屋との差は今すぐには埋まらないかもしれないが、自信を失わずに一歩一歩確実に前進するしかない。

 Jリーグで唯一母体を持たない「市民クラブ」としてJリーグへの加盟を承認されスタートした清水は、今ではその「市民クラブ」という面影はないが、当時何もない清水へ集結した地元出身選手やクラブ設立のために尽力した関係者の想いを、この先何十年、何百年とJリーグが続いたとしても、清水に所属する選手やクラブ関係者には忘れずに戦ってほしい。そのためにも「J1残留」は必至であり、ここからの選手たちの奮起に期待したい――そんなことを感じた28回目の5月15日となった。

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下舘浩久

しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。

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