チームを劇的に変える「魔法はない」 8戦未勝利の清水、見せつけられた名古屋との差
【J番記者コラム】名古屋にホームで0-3完敗、中2日の相手にあらゆる面で上回られた
28年前の5月15日に華々しく開幕した「Jリーグ」。当時10チームでスタートしたが28年が経ち、そのなかで現在もトップリーグであるJ1を主戦場としているのは7チーム。J1リーグ第14節ではその「オリジナル10」同士の対戦が3試合組まれ、そのなかの1試合として清水エスパルスは名古屋グランパスをホームに迎えた。
昨シーズンまでのリーグ戦通算成績は清水の26勝9分23敗となっており、数々の熱闘を繰り広げてきた。また、同じ東海地方にホームタウンを置く両チームだが、現在はJ2のジュビロ磐田を加えた3チームで1996年から2001年まで開催された「東海チャンピオンシップ」(プレシーズンマッチ)をオールドファンであれば覚えているだろう。特に1998年の対戦では9-0という大差で清水が名古屋から勝利したこともあったのだが……。
前節までの成績は、清水が2勝6分5敗の勝ち点12の16位(暫定)。対して名古屋は10勝2分4敗の勝ち点32で首位川崎フロンターレを追う2位となり、連続無失点試合を9試合、連続無失点時間818分のJリーグ新記録を樹立している。奇しくも、それまでの連続無失点記録は1993年に清水が樹立したものであったが、ここまでの今シーズンの内容、順位ともにその差は開いてしまっていた。
そして迎えたこの試合は、名古屋のマッシモ・フィッカデンティ監督が新型コロナウイルスの陽性判定を受け、療養してからの復帰初戦。監督不在の4試合では川崎フロンターレとの2連戦があったこともあり1勝3敗となり、特に前節の鹿島アントラーズ戦(0-2)ではシュート0本に抑え込まれ、「サッカーをすることに対して恐怖を感じていたシーンが見られ、それは気に入らない」と厳しい口調で指揮官は話しており、清水戦を前にかなりの気合いを注入したことが予想された。
それは試合でも証明され、球際の強さ、プレスのスピード、切り替えの早さのどれをとっても清水を上回り、以前の名古屋に戻っていた。また、名古屋は中2日、清水は中5日の試合だったが、清水にあるはずのコンディション面のアドバンテージも総走行距離、スプリント回数ともに名古屋に上回られ、現在の順位差通りの差を感じる内容、結果となった。
守備の堅い名古屋相手では先制点が勝負のポイントだったが、前半24分に今シーズン総失点の4割以上となる課題のセットプレーで失点。合わせて微妙な判定もあったが、イエローカードも3枚出された。そのセットプレーでの空中戦の対応を期待され、第8節浦和レッズ戦以来の先発起用となったDFヴァウドは、主審への異議でカードをもらい、その後にFWマテウスと接触して口内を裂傷、前半45分で交代し、そのまま病院へ。久々の先発でその期待に応えようとしたヴァウドにとっても、不完全燃焼で終わってしまった。
下舘浩久
しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。