英国発“移籍ゴシップ”との付き合い方 海を越え真実のように報じられた驚愕の実体験
ケインのマンU移籍報道には少しだけ説得力もあるが…
思えば、香川のコメントが英語で、本人が語ったように掲載されたのは初めてだった。すると、あっという間にマークが記事中で使った日本代表MFの「今は練習に集中するだけ」というコメントを再利用して、“今は練習でしかサッカーができない”というニュアンスの記事が出回り始め、移籍報道に仕立てられた。
そしてその記事がスペイン後やフランス語、ドイツ語に翻訳されると、さらに移籍のニュアンスが加速し、最終的には“香川の移籍宣言”というニュースで定着してしまったのである。
本当に驚愕するしかない体験だった。
しかし、それも当時の常勝ユナイテッドと、そのトップチーム選手であった香川真司への世界の注目度の凄さがあってのことだったと思う。
というわけで、個人的に、特に英タブロイド新聞の移籍ゴシップには不信感が強い。
そんななか、今日見つけた移籍話で、少しだけ説得力があり、今日のランチタイムのトッテナム・ファンがこぞって話のネタにしそうな記事を見つけた。
それは英大衆紙「ザ・サン」が掲載したハリー・ケインのユナイテッド移籍記事。来季のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権を獲得できなかった場合、生え抜きエースで主将のケインが「移籍願いを申し出る」という内容だ。
もちろん絶対ない、とは言わないが、ジョゼ・モウリーニョ監督を解任して、前節でリーズに1-3と敗れたように、その後の成績もパッとしないトッテナムが今季4位入賞を果たすことはほぼ奇跡。あり得ないと言っても過言ではない状況だ。
そして確かに27歳という年齢に達したケインが、ここで凋落傾向のトッテナムに愛想をつかし、移籍を願い出るという可能性はなきにしもあらず、となる。
さらにユナイテッドが絶対的エースストライカーを欲していることは事実。欧州で“新怪物的存在”となっている20歳のノルウェー代表FWアーリング・ブラウト・ハーランド獲得も噂になってはいるが、彼の代理人はあのミノ・ライオラ。ポール・ポグバの代理人で、ユナイテッドとは揉めに揉めている相手だ。
そこにイングランド代表主将でもあり、プレミアの実績は文句なし。最近はアシスト数も増加し、オールマイティーなアタッカーとしてさらなる成長も見せているケインが移籍希望となれば、ユナイテッドが触手を伸ばす可能性は大いにある。
ただし、こうした移籍につながる根拠は「SunSport understands」(サンのスポーツ部が理解しているところによると)という表現で記されており、なんだ勝手にあなた方が推測しているだけなのか、と読み取れてしまう。
森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。