レアル、バルサ、ユーベはなぜUEFAに徹底抗戦? 欧州名門を狂わせた壊滅的な資金難

3クラブとUEFAの対立は泥沼の様相に?

 これは3クラブにとって、生きるか死ぬかのサバイバルだ。ペレス会長が「サッカー界の発展のために、どうしてもESLが必要だ」と語った”サッカー界”の箇所に、”レアル・マドリード”という言葉をはめ込めば一層その意図は明らかになる。

 “銀河系軍団”を標榜し、金に糸目をつけないスーパースター補強で現在のレアルを築いたペレス会長だが、新型コロナウイルスのパンデミックで無観客試合が続き、ESL設立を発表直後に出演したスペインのテレビ番組で、今季終了後のレアルの負債が「4億ユーロ(約530億円)に達する」と明かしている。

 さらにバルセロナの新会長に就任したジョアン・ラポルタ氏の最大の初仕事はメッシの残留工作ではなく、返済期日が迫っている3億ユーロ(約397億円)の負債を払うために、その融資先を探すことだと報じられた。

 ユベントスに関しては、クリスティアーノ・ロナウドの売却報道が後を絶たず、その理由はどの記事を読んでも、ポルトガル人スーパースターの高年俸が”払える状態ではない”というものになっている。

 この3クラブに共通しているのは、欧州最強を追求する一方で、その補強策は金銭感覚が狂っているようにも見える大物獲得に頼っているところだ。

 今回どこか唐突で、しかも稚拙に見えたESL発足の裏側には、そんな収入以上に金を使う杜撰な経営が作った負債に、新型コロナウイルスの影響で被った減収が加わって、背に腹は変えられなくなったビッグクラブの壊滅的な資金難が隠れている。

 英大衆紙「ザ・サン」は、「このままでは3クラブに2季連続の欧州カップ戦出場停止と1億ユーロ(約133億円)の罰金が科せられる可能性もある」とその衝撃的な処罰内容を予告しているが、となれば、スーパーリーグがダメになったうえに罰金なんて払えない3クラブが徹底的に抗戦するのは明白だ。

 さらなる泥沼の様相となるのか。欧州サッカーをリードしてきたレアル、バルセロナ、ユベントスのバブル崩壊とともに、今後の成り行きには細心の注意が必要となる。
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(森 昌利 / Masatoshi Mori)



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森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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