レスター初戴冠の裏で輝いたもう一つの躍進 トットナムの進化を導く智将の”イングランド化”戦略
トットナムを優勝候補へと飛躍させた指揮官の手腕
現在トットナムを率いるマウリシオ・ポチェッティーノ監督は現役時代、2002年に開催された日韓ワールドカップ(W杯)にアルゼンチン代表の一員として出場。大会屈指のスター選手でイングランド代表のデイビッド・ベッカム氏が、因縁のアルゼンチン戦で決めたPKを与えたDFとして、その名前を記憶に留めている日本のサッカーファンも多いかもしれない。そんな元アルゼンチン代表DFが、今やプレミアリーグ屈指の指導者へと変貌を遂げている。
トットナムはプレミアリーグ第36節でチェルシーと対戦し、2-2と引き分けた。この結果、レスターの優勝が決定。試合終了直後、トットナムの選手たちが肩を落としたのと同時に、イングランド国内にとどまらず全世界がレスターの奇跡の優勝に沸き立った。
ポチェッティーノ監督は試合後、「まずはレスターとクラウディオ・ラニエリ監督におめでとうと言いたい。最後まで優勝争いをしたかったので、落胆はしている。だが、最も若い集団である我々にとって、今季は素晴らしい教訓となった。来季はより一層強くなって、必ずタイトル争いに戻ってくるよ」と悔しさを覗かせつつも、新王者誕生を讃え、来季を見据えるコメントを残した。
しかし、今季のトットナムは、レスターに負けず劣らず、目覚ましい躍進を遂げてきた。ポチェッティーノ監督の下、FWハリー・ケインは昨季のリーグ戦19ゴールの記録を超える25ゴールをマークし得点ランキングのトップを快走し、今やプレミア最高のストライカーとなった。そして今季加入したMFデレ・アリも、プレミア初挑戦ながらリーグ戦10ゴール9アシストをマークするなど、次世代を担う若者が次々と台頭しチームの原動力となっている。
また、先月21日に発表されたPFA(プロサッカー選手協会)の年間ベストイレブンにトットナムから4名が選出されたことからも、その充実ぶりが窺える。来季のUEFAチャンピオンズリーグ出場権も確保し、名将と呼ぶにふさわしい成績を残したポチェッティーノ監督だが、そのチーム作りには明確な傾向が存在する。