「ジャッジリプレイに育てられている」 担当MCが語る番組の意義「審判がいかに難しい仕事を…」
VARは「好きではないけど、なくてはいけないもの」
――今シーズンからJリーグでもビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)が再導入され、ジャッジリプレイでもVARを取り上げる機会は多くなりました。物議を醸すことも多いVARですが、桑原さんはどのような印象をお持ちですか?
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「率直に、好きか嫌いかだけを問われれば、あまり好きではないかもしれません。サッカーの醍醐味である、エモーショナルな部分が削られてしまう可能性があるからです。オフサイドが本当になかったのかが気になって、得点を喜びきれないなんてことも多々ありますよね。リードされていたチームが同点ゴールを決めた時なんかも、そこからグッと勢いがついてくるはずなのに、ゴールチェックに時間がかかってしまうと、その勢いも削がれてしまう可能性があると思います。図らずもVARが試合全体の流れに影響してしまうことがある。そういう意味では難しいシステムだと思います。
ただ、一方で(VARを)導入しなければいけないとも思っています。今は、昔と違ってカメラの台数がとても増えていて、映像の質もクリアになっているので、審判のミスがクローズアップされる機会も増えていると感じます。選手のプレースピードも、以前と比べると飛躍的に向上していますし、それを4人の審判の目だけで対応するのは不可能に近いと思います。審判の技術も向上していると思いますが、その仕事をサポートするためにも僕はVARが必要だと思っています。あくまで個人的な意見ですが」
――審判の方々に対するいき過ぎた批判や誹謗中傷が起こるのは悲しいことです。
「2010年の南アフリカ・ワールドカップ(W杯)のドイツ戦で、イングランド代表MF(フランク・)のランパードがゴールを決めたのに認められなかったことがありましたよね。サッカーの審判にミスはつきものだと思っていますが、もしW杯の決勝ラウンドで、日本のゴールが明らかなミスジャッジによって認められなかった時に、それを受け入れられるのかと自分に問いかけたら、『難しいだろうな』と思いました。実際にイングランドは、その試合で敗退となりましたからね。
ただ、それによって審判に批判の矛先が向くのは辛すぎますし、そこはもうテクノロジーで解決していくしかないのではないかと思います。そういうこともあって、VARは絶対的に好きというわけではないですが、入れなければならない状況になっているのではないかというのが僕の考えです」
――最近では一部の審判の方々がSNSでの発信を行うようになりました。桑原さんが仰っていたように、審判の方々が「見えない壁の向こう側にいる人」だったものが、少しずつ変わろうとしているところなのかなと感じます。そして判定に関する議論をする時にジャッジリプレイという受け皿があることも、とてもポジティブなことだと思います。
「僕自身、以前から今ほどレフェリーの方々に注目していたわけではないですし、そういう意味では僕もジャッジリプレイに育てられていると思います。これからも審判の仕事の大変さや、ルールの理解を広めながら、審判の皆さんの人柄なども伝えることができたらと思っています。
番組に対して様々な意見をいただくなかで、ほとんどはポジティブな意見なんですよ。一部ではどうしてもミスに対して辛辣な意見があったりして、そういうものが目立ってしまうこともあるんですけど、ほとんどの方は番組の意図を汲んで、前向きに感じて下さっていると思っています。この番組を続けていく意義はそこにあると信じているので、これからも努力していきたいですね」
[プロフィール]
桑原 学(くわはら・まなぶ)
1976年1月4日生まれ。千葉県出身。フリーアナウンサー。Jリーグや欧州サッカーの実況のほか、DAZNの『ジャッジリプレイ』のMCを務める。
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(石川 遼 / Ryo Ishikawa)