「あくまでも自分は脇役」 “雑草系”実況アナ、根底にあるサッカーへの深い愛情
実況者のサッカーの見方「作った資料も8割くらいは結果的に使わないことになります」
――実況者はピッチ上の出来事を正確に伝えることが求められます。試合を見るうえで気をつけているのはどのような部分ですか?
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「実況の仕事を丁寧にこなすためには、気をつけるべきことがたくさん出てきます。考え方は実況者それぞれで違うと思いますが、僕はできるだけ選手名を言えるように心がけています。全体を広く見ることも、もちろん大切なのですが、ボールを持っているのが誰なのかを判別しないといけないので、必然的にボールのあるところに目を向けることが多くなります。全体を見てチームとしての狙いを考えていくこととの両立は、なかなか難しいですね」
――テレビやスタンドで試合を見ているファンは巻き戻して見ることもできたり、スマートフォンで情報を検索しながら見ることもできますが、実況者はそれができません。間違えられないというプレッシャーもありますよね。
「そうですね。だからこそしっかり準備をしないといけないのですが、本来大事なのは試合そのものなので、結果的には作った資料も8割くらいは使わないことになるんです。ただ、時には情報を出すことも必要なので、資料に一瞬目を落とすことがあるんですが、そのタイミングも重要なんです。
たとえば、センターバックがボールを持ってゆったりとビルドアップをしようとした時などに一瞬下(資料)に目を落とすことがあるんですが、その時にDFがパスをミスして、一気にシュートまでいかれてしまうことが極稀にあります。そういう時は本当に焦ります(笑)」
――実況者にとって、それは冷や汗ものですね。
「だから、チームのスタイルも考えないといけないんです。例えば、川崎フロンターレの試合を実況する時は、フリーキックやコーナーキックでクイックリスタートが非常に多いということを頭に入れながら中継に臨むようにしています」
――なるほど。チームとしての傾向を知っていれば、実況をするうえでの予測も立てられるということですね。
「そうですね。ロングボールが多いチームの場合はセンターバックが一気にトップの選手にボールを入れてくることも多いので、ゆっくり資料を見ることはできません。実況者にとって、絶対にやってはいけない事故のひとつはゴールの見逃しですからね。今まで見逃してしまったことはないですが、今後も絶対にないとは言い切れないので、常に気をつけていないといけません。