元Jリーガー小椋祥平、銀座でサロン経営 コロナ禍の挑戦に“マムシ”の真髄を見た
コロナ禍で「売り上げとしては厳しい」なか支えてくれる多くの人に感謝
とはいえ、このご時世である。しっかりとした収益を上げて事業として成功させるのは容易なことではない。オープンして約4カ月が経過した今年1月には、首都圏に対して2度目の緊急事態宣言が発令された。オフィス街の人の往来が少なくなり、営業時間にも制限がかかる。設備投資は最小限に抑えることができたとしても、家賃と人件費は積み重なっていく。
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「売り上げとしては厳しいですし、今は貯金を切り崩してやっています。幸いサッカーをやっていたことでわずかながら貯蓄はありますが、このままずっと赤字では経営していけません。だから今は踏ん張りどころです。でも経験しないと何も語れない。お店をオープンしたことで出会えた人もたくさんいますし、目先のことがすべてではありません。僕はプロ1年目から先の見えない生活をしていましたからね(笑)。少しくらいの苦労では挫けません」
あっけらかんと笑いながらも、一度決めたことはやり通す。“マムシの真髄”が見え隠れした。そしてプロサッカー人生が今につながっていることをあらためて実感する。
「水戸ホーリーホックから始まり、横浜F・マリノス、ガンバ大阪、モンテディオ山形、最後がヴァンフォーレ甲府。5つのクラブでプレーし、たくさんのファン・サポーターに応援していただきました。現役当時はあまり自覚がなかったのですが、こうして引退後も来店して励ましの言葉をもらうと本当に嬉しい。回復を提供するはずの僕が元気をもらってしまっています(笑)。そういった方々のためにも、それからプロサッカー選手を引退した人に新たな可能性を示す意味でも、なんとか形にしていきたい」
読み終えて疲れた方は銀座3丁目へ――。セカンドキャリアをスタートさせた“マムシ”が、温かい笑顔とちょっぴりぎこちないお茶出しで迎えてくれる。(文中敬称略)
藤井雅彦
ふじい・まさひこ/1983年生まれ、神奈川県出身。日本ジャーナリスト専門学校在学中からボランティア形式でサッカー業界に携わり、卒業後にフリーランスとして活動開始。サッカー専門新聞『EL GOLAZO』創刊号から寄稿し、ドイツW杯取材を経て2006年から横浜F・マリノス担当に。12年からはウェブマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』(https://www.targma.jp/yokohama-ex/)の責任編集として密着取材を続けている。著書に『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』、構成に『中村俊輔式 サッカー観戦術』『サッカー・J2論/松井大輔』『ゴールへの道は自分自身で切り拓くものだ/山瀬功治』(発行はすべてワニブックス)がある。