元Jリーガー小椋祥平、銀座でサロン経営 コロナ禍の挑戦に“マムシ”の真髄を見た
アスリート時代の経験を生かして伝えたいリカバリーの重要性
「パーソナルや24時間営業など手法は様々ですが、とにかくフィットネスジムが増えている時代です。自分もずっとスポーツをやっていた身なので運動が体に良い影響を与えることは当然知っています。でも、ふと思ったんです。サッカー選手などアスリートはジムで体を鍛えることが仕事の一部だけど、例えばサラリーマンの方は仕事で疲れているのに、さらにジムで鍛えて疲れてどうするのか、とても疑問でした。僕が選手の時は、ボールトレーニングやジムで筋トレをした後に回復させるサイクルでした。つまり休む、休養することも仕事の一つだったわけです。だから一般の方に向けても、体を回復させる施設があったら需要があるんじゃないかって」
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誰かからの入れ知恵でもない。自身で考え、答えを探していく。すると次第に視界が晴れていく感覚に陥った。
思い返せば、16年間の現役生活で出場した試合と同じ数だけリカバリーに時間を割いてきた。練習試合後も含めれば、出場試合数を上回っているかもしれない。トレーニング、試合、そしてリカバリーが一つのサイクルになっていた。
もっとも小椋はリカバリーの重要性をいまいち理解せず、漠然とこなしていた。試合翌日は軽めのジョギングで汗を流し、プールで全身の筋肉をほぐす。時間が短く、強度も低い。さっさとクラブハウスへ引き上げ、ドライヤーで髪を乾かさず帰路につくのが日常だった。
「リカバリーの日は好きでした。とにかく楽だったから(笑)。でも、よくよく調べてみると疲労もいくつかのパターンに分類できるんです。体力的な疲れや筋肉痛は身体的疲労で、それ以外にストレスなどの精神的疲労、それから思考することによる脳疲労があります。人間は何をするにも脳を使っていて、当たり前のことだから意識しないけど脳にも疲労が蓄積していく。この3つすべてを回復させることがリカバリーの狙いなんです」
一般人は選手やアスリートを絶対数で勝るが、リカバリーの必要性や重要性について知る由もない。特に昨今のコロナ禍においては、普通に生きるだけでも無意識のうちにストレスがかかっていることも少なくないだろう。
文明が発達する一方で、情報過多に陥っているケースも多々ある。ただし膨大な情報量を脳が処理できているとは限らない。オンとオフを上手に切り替えることができずに作業効率が落ちてしまっては意味がない。調べれば調べるほど「睡眠負債大国」と呼ばれる日本ならではの課題が山積されていた。
藤井雅彦
ふじい・まさひこ/1983年生まれ、神奈川県出身。日本ジャーナリスト専門学校在学中からボランティア形式でサッカー業界に携わり、卒業後にフリーランスとして活動開始。サッカー専門新聞『EL GOLAZO』創刊号から寄稿し、ドイツW杯取材を経て2006年から横浜F・マリノス担当に。12年からはウェブマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』(https://www.targma.jp/yokohama-ex/)の責任編集として密着取材を続けている。著書に『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』、構成に『中村俊輔式 サッカー観戦術』『サッカー・J2論/松井大輔』『ゴールへの道は自分自身で切り拓くものだ/山瀬功治』(発行はすべてワニブックス)がある。