スーパースター不在でも“レアルはレアル” 名手2人に見たCLを勝ち抜く“伝統”の力
【識者コラム】CL8強でリバプールに先勝、モドリッチ&クロースを中心にプレス回避
UEFAチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝、レアル・マドリードがリバプールとの第1戦に3-1で先勝した。2017-18シーズンのファイナルを思い起こさせる内容だった。
あの決勝、リバプールにはすでにヨーロッパ王者になる力があった。実際にチャンピオンになったのは次のシーズンだったが、もうすべては揃っていた。サディオ・マネ、モハメド・サラー、ロベルト・フィルミーノの3トップ、フィルジル・ファン・ダイクもトレント・アレクサンダー=アーノルドもいた。GKが現在のアリソンではなく、ロリス・カリウス(現ウニオン・ベルリン)ぐらい。
しかし、勝ったのはレアルだった。前人未到のCL3連覇を成し遂げている。レアルの戦い方はシンプル。リバプール最大の武器であるカウンターをさせないこと。そしてもう一つの武器であるハイプレスを空転させること。
今季、準々決勝で対戦した両者は、どちらも3年前と同じではない。ところが、3-1のスコアと試合内容はまったくと言っていいほど同じだった。
レアルはセルヒオ・ラモスを除けば、ほぼベストメンバーを揃えた。とはいえ、クリスティアーノ・ロナウド(現ユベントス)の後継者のはずだったエデン・アザールは負傷の連続で、戦列から遠ざかったままだ。一方のリバプールはセンターバック(CB)に怪我人続出。3年前より、どちらも力は落ちている。そして、その状態で強かったのはレアルだった。
レアルにはルカ・モドリッチとトニ・クロースがいる。この2人がいる限りはなんとかなる。ロナウドが去り、ギャレス・ベイル(現トッテナム)もいない。レアルの看板スターはずっと不在のままなのだが、“BBC”が健在の頃からすでにチームのエンジンはモドリッチとクロースだった。さらに2人を支えるカゼミーロ。MFの3人が、ずっとレアルをレアルにしてきた。
クロースとモドリッチは、ビルドアップの時に後退してボールを預かる。彼らを経由させればボールは奪われない。3年前にはイスコとマルセロがいて、彼らの“ロンド”でリバプールのストーミングをやり過ごしていたものだ。今回はモドリッチとクロースだけなので、3年前ほどのパスワークはなかったものの、正確なサイドチェンジで難なくプレスを回避した。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。