欧州列強の現在地は? “波乱”ドイツの意外な起用法と“脱ロナウド”ポルトガルの充実

ベルナルド・シウバとブルーノ・フェルナンデスが攻撃をリード

■ポルトガル
 2勝1分でグループAの首位だが、セルビア戦(2-2)でのクリスティアーノ・ロナウドの“幻のゴール”が認められていれば3戦全勝のはずだった。終了直前にロナウドが浮き球のパスから抜け出し、飛び出したGKを外すシュートを決めたかに思えたが、DFがゴールからかき出した。微妙だが、ボールはラインを越えていたように見えた。ロナウドは試合そっちのけで副審に抗議、タイムアップ後にキャプテンマークを地面に放り捨てて去っていった。

 幻にはなったが、土壇場で試合を決めるようなシュートを打てるところはさすが。だが、ポルトガルはもう「ロナウドのチーム」ではない。最前線に張っていてプレーにはあまり関与しないのであまり目立たず、FKも相変わらず決まらなかった。攻撃をリードするのは、ベルナルド・シウバとブルーノ・フェルナンデスだ。

 マンチェスター・シティとマンチェスター・ユナイテッド、ライバルチームで活躍している2人は風貌がなんとなく似ている。典型的なポルトガル人顔という感じ。ベルナルド・シウバが右ウイング、ブルーノ・フェルナンデスは右のインサイドハーフ。利き足は違うが、この2人は賢くて運動量も豊富、あらゆる局面にコミットする力がある。とりあえず困ったら、どちらかにボールを預ければなんとかなるという2人である。

 左ウイングのディオゴ・ジョッタがヘディングで点を取りまくっていた。ジョアン・フェリックスが控えだから層が厚い。ジョアン・カンセロとルベン・ディアスもいるので、シティ色が強いかも。

■スペイン
 グループB首位。やはり2勝1分。正直、あんまりちゃんと見ていない。ただ、「あれ?」と思ったのがサイドバックのポジショニングの低さ。ビルドアップであんなにサイドバック(SB)が低いスペインというのは記憶がない。ルイス・エンリケ監督の方針なのか。

 監督と不仲で外されていたというジョルディ・アルバがプレーしていたけど、あんなに低い位置にいるのはバルセロナでは見ない。というか、バルサは3バックになっているが、4枚の時でもいつも高い位置にいるSBだ。あまりちゃんと見ていないので、たまたまだったのかもしれないが、そうでなくてチームの方針だとしたらなぜだろうと思う。あとで見直してみよう。

■イタリア
 3連勝でグループCの首位。ロベルト・マンチーニ監督が相変わらずダンディーだった。国歌を全力で歌う伝統も健在。プレーぶりは、さすがにもうかつてのカテナッチョではない。育成改革もすでに行われていて、セリエAでも攻撃的なスタイルのクラブがずいぶん増えている。その流れでの代表だから違和感はない。

 いわゆるポジショナルプレーの流れに乗っているわけだが、多少のぎこちなさはある。しかし、強豪国のプレースタイルが軒並み似通ってきた。最後の砦だったイタリアも時流に巻かれたのは少し寂しさもある。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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