東京五輪への競争は横一線 「3密」徹底に“幅と深さ”…Jリーグ勢が見せた修正力

攻守にわたって高パフォーマンスを見せたMF田中碧【写真:Getty Images】
攻守にわたって高パフォーマンスを見せたMF田中碧【写真:Getty Images】

【識者コラム】第1戦とは見違えるような出来映え、U-24日本代表がアルゼンチン戦で手にしたものとは?

 何が必要か、何をやるべきか。

 強豪アルゼンチンとの強化試合(1勝1敗)を終えて、よりいっそうクリアになった感がある。U-24日本代表のことだ。

 0-1で敗れた第1戦の課題を踏まえ、諸々の修正を施した第2戦は3-0と文句なしの快勝。攻守を問わず、互角以上に渡り合った。

 第一の修正は密閉、密集、密接の「3密」だ。立ち上がりから狭い囲い(コンパクトな陣形)を維持したことで、各々が孤立せず、高密度で連動しながら守ることができた。包囲網が広すぎて、二の矢が継げなかった第1戦とは見違えるような出来映えと言っていい。

 しかも、切り替えが速く、球際で遠慮のないファイトをガンガン仕掛けた。敵を近くに置いて守る利点が存分に生きたわけである。その点も劣勢に回った第1戦との大きな違いだ。

 さらに、戦術面においても細かな修正が行き届いていた。第一に前線からのプレスだ。2トップ(林大地と久保建英)の役割が整理され、久保が敵のアンカーを見張り、その前で林が激しく追い回す。久保がアンカーへのパス経路を消したことで、敵側に中盤で“浮いた”選手がいなくなる。田中碧と板倉滉のダブル・ピボットが残る中盤の2人をがっちりつかんでいた。

 敵のビルドアップが外回りになれば、ウイングとサイドバックが素早く縦ズレしながら圧力をかけ、最終ラインの速やかな横ズレでボールサイドにがっちりフタをする。狭い囲いを維持したからこその見事な手際だった。

 前の守りが機能する一方、後ろからの攻めも大きく改善されていた。ビルドアップの基点を「2センターバック+田中碧」の3人に固定し、板倉は2列目に進出。さらにプレス回避の出口を四隅(前後左右)に作った。

 最後尾は右に瀬古歩夢、左に町田浩樹。その手前に田中碧が並んでパスを回し、敵の2トップを翻弄。四隅の出口を効率よく使い、プレスをやすやすと空転させた。第1戦とは異なる日本の立ち位置にアルゼンチン側が混乱。途中から5バック(5-2-3)気味に変更して、ますます事態を悪化させている。ウイングバックが大外で2人(日本側のウイングとサイドバック)を相手にするハメになったからだ。

 中央に人が群がり、攻撃の幅を失った第1戦の教訓を日本が生かした格好。高い位置で大外に張り出した左の相馬勇紀、右の食野亮太郎(あるいは久保)に向けて、瀬古と町田からの対角パスが通り、中央からは田中碧が広角にパスを散らして鋭く敵のゴールに迫った。

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北條 聡

1968年生まれ。Jリーグ元年の93年にベースボールマガジン社に入社し『週刊サッカーマガジン』編集部に配属。日本代表担当として2002年日韓W杯などを取材した。04年から『ワールドサッカーマガジン』編集長、09年から『週刊サッカーマガジン』編集長を歴任。13年にフリーランスとなり、現在は様々な媒体で執筆している。

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