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「日本には日本の良さがある」 元J外国人監督が断言「フェアな文化を守ったまま…」
【ゼムノビッチ監督が語る育成指導論|最終回】日本の育成年代は「もっとベテラン指導者を上手く活用すべき」
J1の清水エスパルスやJ3のFC岐阜を指揮し、今年から淡路島に活動拠点を置く相生学院高校(兵庫県=通信制)サッカー部を指導するズドラブコ・ゼムノビッチ氏は、セルビアでも4つのクラブの監督を務めた経歴を持つ。母国ではベオグラード大学体育学部を卒業。終了すれば全競技の最高級ライセンスを取得できるが「半分くらいは途中で脱落する」難関だったそうだ。来日したのは3つのプロクラブの監督を経験した後だったが、それでも「日本のサッカーを知るために」再度JFA(日本サッカー協会)のS級ライセンスも取得した。
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彼我の違いを感じるのは、同氏のように豊富な経験を持つ指導者の活用方法だという。
「本来は若年層の指導者ほど経験が必要になります。育てた経験が豊富な人は、選手を見極める目が違う。もちろんセルビアでも、若い指導者はユース以下のコーチをして経験を積んでいくわけですが、必ずクラブにはそういう若いコーチを教えるベテランの指導者がいます。日本もJリーグが始まって歴史を重ねてきたわけで、もっとベテランの指導者を上手く活用していったほうがいい」
実際に日本の指導現場を見て感じるのは「選ぶ人が若過ぎる」ことだという。
「10~15年後の良い選手を見極めるには、当然多くの選手の成長を見てきたキャリアが必要になる。ちなみにセルビアには、セレクションはありません。スカウトは、それぞれ責任を持って選手を連れてくる。クラブも誰がマルをつけたのか、責任の所在が分からないような選手は獲りません」
それだけ才能の発掘作業には重きが置かれ、各クラブとも熟達した目利きを用意している。
「ある田舎町でスカウトに見出され、年俸何億円も稼ぎ出すようになった選手がいます。彼は後にスカウトに御礼として車のキーをプレゼントしていました。そのスカウトに会わなければ、今の彼はなかったということです」
ベオグラードでは、土日になればプロからアマチュアまで1000試合近い公式戦が朝から晩まで続けられるそうである。
「ベオグラードだけでも200カ所くらいのグラウンドがあるので困ることはない。日本では高校や大学を出てプロにならなかったら、そこで終わる選手がほとんどですが、セルビアではみんな30歳くらいまではプレーします。社会人になってからプロになる選手も少なくありません」
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。