「重力が100倍に…」 ベテランGKが伝えたい、オバトレ症の現実と付き合い方
六反が伝えたいこと「『こんなこと言っていたな』と思い出してもらえたら」
六反はオーバートレーニング症候群について「絶対に1人では治せなかった」と話す。クラブからの発表があった後、同じくオーバートレーニング症候群で苦しんだ元サンフレッチェ広島の森﨑浩司や、現清水のGK権田修一らと連絡を取り合った。それが励みになったからこそ、六反はオーバートレーニング症候群になった選手の周囲にいる人に伝えたいことがあるという。
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「オーバートレーニング症候群はすぐに完治することはないものです。僕も発症から2年経った今でも不安を感じることはあって、これは一生付き合っていかなければいけない問題だと思っています。当時、いろいろな方から連絡をもらって、自分は周りの人に恵まれていたんだなと感じることができましたし、あの時に僕に手を差し伸べてくれた人たちにはずっと感謝しています。人の温かみを感じたり、考え方が変わったりと人生においてプラスになった部分もあります。ただ、5カ月もの間、家族や周りの人に心配をかけたので、できるなら、ならないほうが良いですけどね(笑)。
森﨑浩司さんや権ちゃん(権田修一)とは、それほど連絡を取るような間柄ではなかったんですけど、当時はいろいろな話をしました。エスパルスの方々も、僕が今こうやってサッカーができるようになるまで尽力してくれました。そうやって周りに助けてもらえたことは人生の大きな経験です。
僕としては、オーバートレーニング症候群になってしまった選手よりも、その選手の周りの方に伝えられることのほうが多いかもしれないです。腫れ物に触るように扱うのではなく、近くでしっかりとサポートしてあげることが大切です。ナーバスなことですけど、他人が関わっちゃいけないと思うのではなく、なってしまったものはしょうがないこととして本人も周りも受け入れること。そして、オーバートレーニング症候群になる前と後では、違う人として接することも重要だと思います。オーバートレーニング症候群になると自律神経が乱れて、自分でも何にイライラしているのかさえ分からないことがありますから」
「今にして思えば、面白いエピソードがたくさんありますよ」と、当時のことを笑顔を交えながら語ってくれた六反。苦難を乗り越え、再びJリーグのピッチに立つその姿は多くの人に勇気を与えているはずだ。
「スポーツだとオーバートレーニング症候群と言われるものですけど、一般の方であればいわゆるうつ病ですよね。だからこそ、サッカー選手という立場で発信することがいろいろな人の手助けになれると思っています。
取材でこうやって“オバトレ”についてこんなに詳しく話したことも今までなかったです。逆に言えば、取材する側からしても聞きにくいような内容だったかもしれないですけど、僕自身はなってしまったものはしょうがないと受け入れていますし、こうして復帰してJリーグで試合に出ることができている。それを見て一緒に頑張ってくれる人もいると思いますし、これからオーバートレーニング症候群で悩む選手がいた時に、『六反選手もこんなこと言っていたな』と思い出してもらえたら嬉しいです」
[PROFILE]
六反勇治(ろくたん・ゆうじ)
1987年4月10日生まれ。鹿児島県出身。熊本国府高校卒業後に2006年にアビスパ福岡に加入し、同クラブでJデビュー。横浜F・マリノス、ベガルタ仙台を経て、2017年に清水エスパルスへ移籍。19年にオーバートレーニング症候群と診断された。2020年に横浜FCに期限付き移籍、21年に完全移籍した。
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(石川 遼 / Ryo Ishikawa)