「日本サッカーの環境に感謝」 C大阪一筋13年、韓国代表GKが語るJリーグへの愛着
Jリーグは「サッカーに集中できる環境が整っている」
Jリーグ屈指のGKとしては、実績も知名度も十分。それでも「満足できていない部分」というのが気になった。
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「ゴールキーパーは、どの試合でも完璧にプレーするというのはものすごく難しいポジションです。なので、満足できたシーズンを過ごせたというのがありません。常にゴールを守る立場なので、例えばその試合を無失点で抑えたとしても、また次の試合がある。『一つの目標を達成するために頑張る』というのは、ゴールキーパーとしては必要ないというよりかは、常に満足できないポジションなんだと思います」
サッカーにおいて失点はつきものだが、スーパーセーブをしてピンチを切り抜ければヒーローとなり、自分のミスで失点したとしても、自らの力で失敗を取り戻すのは皆無のポジションでもある。それでも、「常に満足できない」というのは、飽くなき向上心があるからにも感じる。
「もっと上手くなりたい」という気持ちを高められたのも、C大阪というチームに魅力があったからだという。
「13年在籍しながら、このチームがいいなと感じるのは、先輩や後輩もみんなの仲がものすごく良くて雰囲気がいいということ。現状に決して満足せず、トップを目指すという雰囲気がとても好きですね。監督やコーチ、選手と多くの人たちと関わってきましたが、優勝を目指して、常に明るくやっていけること。そこに魅力があります」
それこそC大阪はJ2へ降格した歴史もあり、キム・ジンヒョン自身も苦しい時期を味わっているはずだが、それでも前を向いて上を目指すクラブの雰囲気の良さがあると言い切る。
Jリーグしか知らないキム・ジンヒョンだが、これだけ長く日本にいると愛着が湧くもの。まずはサッカーに集中できる環境の良さを挙げた。
「私は他のリーグで戦ったことがないので比較はできませんが、Jリーグは世界に恥じないレベルにあると思います。サッカーに集中できる環境が整っていますし、自分にとってはサッカー選手としてやりたかったことを実現させてくれたのがJリーグです。日本サッカーの環境には本当に感謝しています」
さらに日本に来た当時、人や街並み、生活した時の印象について聞くと、こんな答えが返ってきた。
「日本の方たちは、本当にどこに行ってもみんなが優しく接してくれます。他人に迷惑をかけないようにする人たちがものすごく多い。初めて来た時に驚いたのが、とても街並みがきれいだということ。あと、先進国だけれども、多少アナログ的な文化も残っていますよね? そういう部分では、新しいものと古いものが混在していて、面白いなと見ています」
少し考えて「もっと驚いたことがあります」と思い出すかのように言ったのが、「車の運転です」と笑う。どういう意味だろうか。
金 明昱
1977年生まれ。大阪府出身の在日コリアン3世。新聞社記者、編集プロダクションなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めた後、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。2011年からは女子プロゴルフの取材も開始し、日韓の女子ゴルファーと親交を深める。現在はサッカー、ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。近著に『イ・ボミ 愛される力~日本人にいちばん愛される女性ゴルファーの行動哲学(メソッド)~』(光文社)。