“新守護神”権田、神がかり的セーブ連発 清水が「シュート1本」で掴んだ勝ち点1の意味

殊勲のGK権田「枠に来たシュートは全部止めるために僕はこのチームにいる」

 結局試合はスコアレスドローという結果に終わったが、ロティーナ監督は「満足していると言わなければいけない。良い守備をすること、エラーをしないことを90分間続けて勝ち点1を取れた内容だった」と結果については一定の評価をし、新システムについては「プレスのところで、少し上手くいかないことがあったが、守備のところでズレが起きたことは選手を責めるつもりはない。(準備する)時間がないなかでもしっかりと戦ってくれた。守備の部分は全体的には悪くない」と守備の内容も評価していた。

 ただ、鳥栖の決定的な場面が多くあったことも事実だが、特に後半はGK権田修一がゴール前に立ちはだかった。後半12分のゴール正面からのFW林大地のシュート。同30分には権田が「一番危なかった」と話したMF樋口雄太のミドルシュート。味方の選手がブラインドとなり、また西日の中から飛んで来たシュートに対してわずかに右手の指先で触りクロスバーに弾かれる。そして、同34分にも右CKからFW山下敬大にニアサイドで合わされるが、これも権田が見事な反応でまたも右手指先で触り、今度はポストを弾いた。同39分にもペナルティーエリア内からのMF仙頭啓矢のシュートを、横っ飛びで今度は左手でのファインセーブを見せた。

 試合後に権田は「僕らが目指しているのは今日のようなサッカーではない。『ゼロに抑えたからOK』ではなく、アビスパ福岡戦や鹿島アントラーズ戦、セレッソ大阪戦のようなアグレッシブなサッカーをどんどん見せていきたい」と話し、「すべての局面でこのチームはまだ前に立つだけでボールに対してプレッシャーをかけていないシーンがとても多い。できるだけボールに対してディフェンスの選手はアタックしてもらい、そのゴールを守るのが僕の仕事。そこは僕の管轄であり、それを止めるために、今日のようにシュートを何本打たれても枠に来たシュートは全部止めるために僕はこのチームにいる」と、チームメートへの注文と自身の存在意義も話していた。そして、「しっかりとディフェンスの選手が体を寄せているから僕がプレーしやすい環境になっている」と、自身のファインセーブがあるのもそれがあってこそだと仲間へのリスペクトも忘れてはいない。

 前節にはJ1最長記録となる134キロという1試合でのチーム総走行距離を記録し、その走力と攻守に組織された鳥栖に圧倒的にボールを支配されたが、この試合での最大のテーマであった「失点をしない」ことはクリアできた。しかし、ロティーナ監督は試合後の会見とは違い、権田同様に手放しに喜んではいないはずだ。アンカーで今シーズン初先発となったヘナト・アウグストの両脇を使われたことや、セカンドボールが拾えないクリアの精度。権田が防いだ場面以外にも、これまでの失点の原因となっているセットプレーからファーサイドに流れたボールを相手に詰められる場面など、攻守に課題は山積みである。

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下舘浩久

しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。

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