田中碧は「神出鬼没、縦横無尽」 ついに現れた“走攻守”ハイレベルな日本人MF

ピッチ上で笑顔が絶えないのは充実一途の証

 いや、前へ出るばかりじゃない。敵のボールが通過すれば、サボらず戻る。この追走劇がまた秀逸だ。全速力で帰り、危険の芽を摘み取ってしまう。帰陣など当然の仕事と言えばそれまでだが、それを90分間やり続けるのは簡単ではない。体力はもとより、鉄の意志が必要だ。それが田中にはあるのだろう。

 ただ、守るためではなく、攻めるために戻るケースもあるから面白い。ピボット役の選手を差し置いて最後尾まで下がり、ビルドアップの基点として鮮やかに立ち回るのだ。いつ、どこで、どんな仕事が求められているか。その解をいち早く読み解く力が、田中をピッチの至るところに向かわせるのかもしれない。

 印象的なのはピッチ上で笑顔が絶えないことだ。もう、プレーするのが楽しくて仕方がないといった趣。充実一途の証だろうか。それでも浮ついたところが微塵もない。それも海外組との「距離」を自覚しているからだ。常に高みを目指し、器を大きくしてきた人らしい。

 今のパフォーマンスを見れば、やはり期待せずにはいられない。日本代表への招集だ。3月25日に横浜の日産スタジアムで日韓戦(国際親善試合)が開催される。もっとも、東京五輪を控えたU-24日本代表の国際親善試合が同時期に2試合(対アルゼンチン)組まれており、こちらへ招集される公算が大きい。

 コロナ禍の影響で海外組の招集が一筋縄ではいかないとなれば、それこそ国内組の出番である。田中碧、フル代表招集アリ――なんじゃなかろうか。遅かれ早かれ、主力の一角に収まる器でしょうから……。
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(北條 聡 / Satoshi Hojo)



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北條 聡

1968年生まれ。Jリーグ元年の93年にベースボールマガジン社に入社し『週刊サッカーマガジン』編集部に配属。日本代表担当として2002年日韓W杯などを取材した。04年から『ワールドサッカーマガジン』編集長、09年から『週刊サッカーマガジン』編集長を歴任。13年にフリーランスとなり、現在は様々な媒体で執筆している。

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