「自分はなにやってんだ」 日本一の広島ユースで“10番”、病に冒された20歳の今
「調子はどう?」 広島ユース時代の恩師から受けた激励の言葉に刺激
現在も月に数回の通院は欠かせない。ただ、幸いにも病気は完治したと告げられている。ここまでの道のりは険しかったが、この経験を経てさまざまな人が自分のことを気にかけてくれていることに気づいた。
詳細な病状について、桂はごく一部の人間にしか公にしていない。それにもかかわらず、同期からだけでなく、違う大学に進んだユース時代の先輩からも、「元気かぁ」といった声がどこからともなく届く。
驚いたのは、ある日突然、広島の下部組織で指導を受けた沢田謙太郎(現・広島トップチームヘッドコーチ)から連絡が入ったことだ。中学時代からお世話になった恩師の激励には、とりわけ刺激を受けたという。
「『調子はどう?』って言われたので『頑張ってます』と伝えたら、ずっと心配してくれていて……。『こっちに戻ってくるのを楽しみにしているからな』って、圧をかけられたような感じもしたんですけど、サンフレのスタッフも自分のことを気にかけてくれているみたいですね。でも、そういう言葉がいちばん刺激になりますし、嬉しかったです。いろんな人が自分のことを気にかけてくれているんだなというのは実感しました」
しばらく表舞台に立っていない桂は、「今の自分を知ってほしい」と強く思っている。「もう桂陸人はサッカーをやっていないんじゃないか」「サッカーへの熱がなくなったんじゃないか」――もし、そう思われているのならば、しっかり伝えたい。
「絶対にこれから活躍して道を切り開くつもりです。それが、苦しい時にも支えてくれた人たちへの恩返しになると思っていますし、なにより、ユースの頃から応援してくれている方たちへ頑張っている姿を見せたいんです。ここからもう一度、覚悟を持ってサッカーに打ち込んでいきます」
かつて広島の下部組織で注目を浴びた20歳の若者は今、夢に向かって再び走り出している。(文中敬称略)
(FOOTBALL ZONE編集部・橋本 啓 / Akira Hashimoto)