闘莉王、震災で感じた“日本人魂” 被災地に勇気を与えた奇跡のパス【#あれから私は】

被災地のために立ち上がる…古巣・水戸でのボランティア活動とチャリティーマッチ

 ブラジル出身で渋谷教育学園幕張高を卒業後、2001年にJ1サンフレッチェ広島でプロデビューした闘莉王。日本で生活を送るうえで、これほどの恐怖と直面したことは初めてだった。サッカーに打ち込んできた人生で、サッカーのことが考えられなくなった。

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「ここから何ができるか、というよりは普通の時がどれだけ幸せだったか、そういうことを感じてしまった。外国人の選手もみんな国に帰ったりして、それぐらい怖がって不安になっていた。正直なところ経験したくなかった。こんなに好きな日本が、こんなことになっているなんて……という嫌な気持ちだった。でも、逆にそれが自分を強くしてくれた」

 だからこそ立ち上がった。闘莉王はプロ3年目の2003年に水戸ホーリーホックに在籍。古巣も大きな被害を受けた。名古屋のチームメートだった元日本代表GK楢﨑正剛とともに、水戸市の子どもたちを訪問。愛知トヨタの協力の下、チャリティーオークションも行った。

「何かしたい、何か手伝いたいというその気持ちでいっぱいだった。こういう時こそ、“日本魂”というか、団結してもう一度作り直そうとするのは日本にしかできない。僕が最も日本を好きなところはそういうところ。僕らが勝手に行くとか行動することはできなかったけど、できる範囲でやろうと思っていた。1人じゃ行けないので楢さん(楢﨑氏)もついてきてくれた。本当に小さなことかもしれないけど、足して大きなことになる。自分として何ができるのか。できる範囲でやろうという気持ちを持てた。それについてきてくれた仲間たちには感謝」

 そして、忘れてはならない一本のパス。被災地へ勇気を与える“奇跡のパス”となった。

 闘莉王は2011年3月29日、長居スタジアムで行われた日本代表対JリーグTEAM AS ONEの「東日本大震災復興支援チャリティーマッチ」に出場。闘莉王はJリーグTEAM AS ONEの一員として先発した。FWカズこと三浦知良、GK川口能活、DF中澤佑二、MF中村俊輔、MF小野伸二、東北出身のMF小笠原満男ら元日本代表のレジェンドが集結したJリーグTEAM AS ONE。アルベルト・ザッケローニ監督率いる日本代表との一戦は苦しい展開から始まった。

 前半15、19分と立て続けに失点。重い雰囲気を一変させたのが、後半17分から登場したカズだった。同37分、川口のロングフィードに反応した闘莉王が頭で落とし、カズへパス。受け取ったカズが相手GKとの1対1からネットを揺らすと、スタンドに向かって“カズダンス”を披露した。

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