“新生”清水が放つ「ワクワク感」 躍動する新戦力の陰で光る既存メンバーの存在感

2試合で得られた何よりもの収穫は、新戦力と既存選手との融合

 試合は終了間際の後半アディショナルタイムに、福岡DFエミル・サロモンソンのFKが清水の作った壁に当たってコースが変わり、鹿島戦で清水のゴールを死守したGK権田修一でもなす術なく見送るしかない不運な同点ゴールが決まり、2-2の引き分けで終わった。ロティーナ監督は「残り2分で勝ち点2を失ってしまったすごく残念な試合となった」と試合後に振り返っている。

 しかし4-3-3、4-1-4-1、そして4-4-2とその攻守の状況により変幻自在にシステムを変えるロティーナサッカーは、まだまだ楽しみが隠されている。中山、権田以外の“新加入組”――DF片山の攻守にわたる的確な動きやFWチアゴ・サンタナの巧みなボールキープからのゴール、最終ラインを統率するDF鈴木義宜、献身的な動きで清水での初ゴールが待たれるFWディサロ燦シルヴァーノなどへの期待は高まるばかりだ。

 もちろん、既存のメンバーもこのまま黙ってはいないだろう。福岡戦ではメンバー外となったが、MF金子翔太は攻守でハードワークができる人材だ。まだリーグ戦での出場がない昨季10アシストを記録したMF西澤健太、オリンピックイヤーで気合いの入るDF立田悠悟、そして近年の怪我の影響でまだコンディションが戻らないMF石毛秀樹など、生え抜き選手たちも虎視眈々と出場機会を狙っている。さらにMFヘナト・アウグストやDFエウシーニョ、DFウィリアム・マテウスのブラジル人助っ人も控えている新生エスパルスに対して、サポーターのワクワク感は止まらないだろう。

 もちろん、実力者を集めたからといって簡単に勝てるほど甘くないことは、この福岡戦で証明された。14年ぶりの開幕2連勝をもう少しというところで逃したが、ロティーナ監督は前日練習後の会見で「様々なデータがあるかもしれないが、それ(開幕2連勝)は我々にとって大事なことではない。過去に勝利した、敗北したというデータよりも我々にとって大事なことは、次の試合に向けてベストで最良な準備をすること。それを一番に心がけてトレーニングをする」と話していた。

 この2試合で得られた何よりもの収穫は、新戦力と既存選手との融合だろう。新戦力が中心となっていることは間違いないが、開幕戦から途中出場で試合の流れを変え、勝ち点をもたらす働きをしていたのはチームではベテランの域となったMF河井陽介であり、4シーズン連続でキャプテンを務めチームを支えているMF竹内涼だった。そして苦手な守備も積極的に取り組んでいる、清水加入3年目となるMF中村慶太の存在も忘れてはいけない。

 お互いの連係をさらに深め、今以上にチームとして一丸となって戦う姿が見られるようになれば、ここ数年続いていた残留争いとは無縁なシーズンとなるだけでなく、もっとレベルの高い順位争いにも顔を出すことになるだろう。

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下舘浩久

しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。

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