「新しい自分が見えそう」 田中陽子、スペイン挑戦2年目の成長を見据えた“実験”
【インタビュー前編】味方にボールを要求し、“自分に合わせてもらう”形を模索
スペイン女子1部スポルティング・ウエルバのMF田中陽子は海外挑戦2年目を迎え、“新たな自分”を模索している。これまでフィジカルのハンデがあったなかで、「相手の強さをあまり感じなくなった」という進化、そして「成長のための実験」と話す変化について訊いた。(取材・文=Football ZONE web編集部・小田智史)
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念願の海外移籍を果たした2019-20シーズンは、田中にとって難しさに直面した1年だった。初ゴールを挙げた20年1月のテネリフェ戦(3-1)で人生初の負傷交代を経験し、回復まで2カ月を要した。復帰目前に新型コロナウイルス感染拡大の影響で女子1部・2部リーグがシーズン打ち切り。スペイン1年目はリーグ戦13試合1得点に終わった。
迎えた新シーズン、開幕当初はベンチスタートだったなかで、昨年11月以降は左サイドを主戦場にスタメン起用が増加。チームは成績不振で監督交代となり、リーグ戦暫定14位(4勝5分10敗/3月6日現在)と苦しんでいるが、田中はボールを受けるためのチャレンジに取り組んでいると明かす。
「ウエルバはつなぐサッカーではなくて、蹴るスタイル。ボールがなかなか来ない時もあります。受けるタイミングすらなくても、それで怒られたりして(笑)。とりあえずボールをもらえれば(自分のプレーが)できるので、『数的不利でもいいから頂戴!』と練習から言っています。成長のために実験。“新しい自分”だと思います」
これまでの田中は、ボランチやトップ下でゲームメーカー役を担っていても、ボールが来なければ強く要求するのではなく、周りに合わせていくスタンスだった。しかし、今は海外挑戦時に日本人選手の課題とされる自己主張を乗り越えた先に、プレーヤーとしてのステップアップを見据えている。
「自分が合わせるんじゃなくて、自分に合わせてもらうイメージ。感情表現を含めて、日本人が苦手な部分をやっていこう、と。チームメートも監督も、私の力は分かってくれています。まずはそれを出せる状況にしないといけないので、練習からみんなの意識を向けてもらうように要求しています。これができるようになったら、どこのチームに行っても自分を出せると思います。難しい挑戦なので、焦らずに、一歩ずつやることをやるって感じです」