元Jリーグ外国人監督が高校サッカー初指導 「物凄くもったいない」部活の伝統とは?

淡路島を拠点に活動する相生学院高校サッカー部【写真:相生学院高校サッカー部】
淡路島を拠点に活動する相生学院高校サッカー部【写真:相生学院高校サッカー部】

100~200人の部員が一つのグラウンドで練習すれば「同じような選手が育ってくる」

 それに対し通信制の相生学院は、来年新入生を迎えても3学年で35人の編成になる。指導者は全員に目を配れるし、必然的に低学年から公式戦の経験を積み重ねることができる。さらに在学中でも、プロも含めて他に本人に適したレベルのチームが見つかれば、いつでも移籍を認めていく方針だという。

「100~200人も部員が一つのグラウンドでトレーニングをすることになれば、個々の特徴に合わせたメニューを組み込むのは難しい。全員が同じメニューをこなすことになり、どうしても同じような選手が育ってくることになります」

 そう言ってゼムノビッチ氏は続けた。

「高校生年代は、そろそろ適性ポジションを決めて、それに即したトレーニングをしていく必要があります。例えばFWなら、ゴール前の動きやシュートの精度が求められ、裏を取る動き、ポストワーク、ヘディングなど、実際のゲームで使う技術や動きを反復させていかなければならない。でもみんなが同じトレーニングをしていたら、どこのポジションでもこなせるけれど、特徴の少ない中途半端な選手になってしまいます」

 15歳までにテクニックを完璧に仕上げ、そこからは個々の特徴を際立たせていく。

 ゼムノビッチ氏は、それが「どこでも通用する良い選手」を育成する道筋だと考えている。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)



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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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