「日本人かどうかは重要じゃない」 堂安&奥川、互いを認めドイツで高め合う2人
【ドイツ発コラム】奥川が今冬にビーレフェルト加入、堂安との“日本人共演”はまだ実現せず
今季ブンデスリーガ昇格クラブのビーレフェルトではオランダのPSVからレンタル移籍で日本代表MF堂安律がプレーし、そして今冬にザルツブルクから同MF奥川雅也が同じくレンタル移籍で加入している。
前半戦を終えた段階でリーグ最少の13ゴールだったビーレフェルトにとって、攻撃陣に即戦力が必要なのは誰の目にも明らか。そんなチーム事情もあり、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場経験があり、バイエルン・ミュンヘン相手にゴールも決めている奥川は、大きな期待とともにチームに迎え入れられた。
ただ加入後、ここまでまだ2人の共演はない。日本のファンからしたら、堂安と奥川が同じチームでプレーするのだから、2人が同時にピッチに立つことをとても楽しみにしている。そして異国で戦う選手にとって、同国人選手がチームメートになることはものすごくメリットになるはずだと僕らは考える。
実際にメリットになる点も多いだろう。堂安は地元紙「ノイエ・ヴェルトフェリッシェ」のインタビューで、次のように答えていた。
「雅也はいい選手ですし、いいパフォーマンスをもたらしてくれると思っています。自分たちのこれまでの経験を話し合ったりもしました。互いに励まし合って、もっと良くなっていけると思っています」
ただ、それが決定的に大事かというとそういうわけではない。堂安はその前に、次のようにも見解を述べていた。
「日本人かどうかはそこまで重要じゃないです。もっと大事なのは、似たような能力を持つ選手が新しく来てくれたということですね」
ドイツ語でアップされたインタビューを日本語に訳しているので、一字一句合っているわけではないし、ほかに意図があって話されたことかもしれない。でも、日本人が来たからそれでオッケーなのではなく、あくまでもチームの助けになるための選手が来てくれて、そしてそれが日本人であってくれたという流れを見落としてはならないだろう。そもそもこれまでも堂安は主軸として懸命にプレーし、チームに貴重な勝ち点を何度ももたらしてきているのだから。
奥川にしても「律はいいプレーをしていると思う。僕らはライバルとして、そしてチームメートとして互いにサポートし合えるかなと思っています。そこはこのレンタル移籍における一つのファクターだったかな」と、同紙のインタビューで話している。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。