コロナ禍で消えた「ホーム・アドバンテージ」 CL16強の異変に見る“人の利”の力

無観客のカンプノウで3点差でバルセロナに勝利したパリ・サンジェルマン【写真:AP】
無観客のカンプノウで3点差でバルセロナに勝利したパリ・サンジェルマン【写真:AP】

【識者コラム】CLラウンド16第1戦、ホームチームが1勝7敗という珍しい結果に

 UEFAチャンピオンズリーグのラウンド16が始まった。第1戦の8試合でホームチームが勝ったのは、1試合だけという珍しい結果になっている。

 唯一の勝利はFCポルト対ユベントスで2-1だった。残り7試合はすべてアウェー側が勝利した。ホームといってもRBライプツィヒとボルシアMGはハンガリー、アトレティコ・マドリードはルーマニアの“ホームゲーム”だったという事情はあるかもしれない。それにしても、ここまでホーム側が負けるとはどういうことなのか。

 今季のラウンド16は接戦が予想された。昨季の王者バイエルン・ミュンヘンは国内リーグで停滞していて、リバプール、バルセロナ、レアル・マドリード、ユベントス、パリ・サンジェルマン(PSG)といった優勝候補は軒並み調子が上がっていなかった。昨季との比較で進化が見られたのはマンチェスター・シティとアトレティコ・マドリード、監督がトーマス・トゥヘルに代わったチェルシーぐらい。結果が予想しにくい組み合わせでもあった。

 接戦ならホームチームが有利になりそうなものだが、ことごとく勝ったのはアウェーである。PSGはバルセロナに4-1、バイエルンはラツィオにやはり4-1と大差勝ち。

 アウェー側が強いというより、ホームチームが脆かった印象だ。従来のヨーロッパはホーム有利の傾向がはっきりあったはずだが、コロナ禍で無観客試合になると、ホームチームが簡単に負ける現象が各地で起こっている。ホームには地の利があったはず。使い慣れたスタジアム、移動もほぼない。しかし、結局のところホーム・アドバンテージとは“人の利”だったということがよく分かった。

 ファンの応援こそがホーム・アドバンテージだったのだ。

 人の声援など音にすぎない。アウェー側が気にしなければ、それほど大きな影響はなさそうに思える。ただ、その音には人の思いが乗っている。何万人もの人々の思いが重なる。単純にそれが選手たちの力にならないわけがないのだ。

 実際、選手に聞くとファンの声は意外なほどよく聞こえるそうだ。チャントの合間に放たれる1人の声が、はっきり聞こえることもあるという。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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