横浜FM、“可変型システム”採用も不発 J1王者・川崎との差を痛感した“完敗”開幕
【J番記者コラム】最後まで噛み合わなかった歯車、川崎にスコア以上の完敗
終わってみると「王者の完勝」と表現するしかない90分だった。川崎フロンターレが決定機を確実に決めていれば大差がついていても不思議ではない。
横浜F・マリノスはキャンプ中から取り組んできた3バックのエッセンスを取り入れた「可変型システム」(MF天野純)を採用したが、残念ながら戦術面での前向きな成果はほとんど得られず終わった印象が強い。昨季よりもやや引いた位置で構えることの多い守備面で一定の成果を得る一方、攻撃では本来のパスワークやテンポが影を潜めた。
中盤でゲームメークを試みた天野は「ボールを受ける意識が低くて、ビビりながらサッカーをやっていた。今日はそこに尽きる」と、終始低調に終わったパフォーマンスを悔やむ。主将のMF喜田拓也を欠く中盤は狂った流れを取り戻す術を持たず、歯車は最後まで噛み合わなかった。
それを誘ったのは、川崎の守備意識の高さによるところが大きい。「囲い込みのところを強調して今日のゲームに入った」と鬼木達監督が明かしたとおり、最前線のFWレアンドロ・ダミアンから始まる守備はアグレッシブでいて、まったく隙がない。ディフェンスリーダーのDF谷口彰悟が「ゼロックス(・スーパーカップ/対ガンバ大阪/3-2)の時より統一感を持った守備、サッカーができていた」と手応えを明かしたとおりだ。
件の富士ゼロックス・スーパーカップでは、前半を2-0で折り返しながら後半に2失点し冷や汗を流した。あれから1週間も経たずに問題を修正できるあたりが王者の所以だろう。追加点こそ奪えなかったが「2-0で勝ち切ったことをすごく評価したい」と鬼木監督はご満悦だった。
藤井雅彦
ふじい・まさひこ/1983年生まれ、神奈川県出身。日本ジャーナリスト専門学校在学中からボランティア形式でサッカー業界に携わり、卒業後にフリーランスとして活動開始。サッカー専門新聞『EL GOLAZO』創刊号から寄稿し、ドイツW杯取材を経て2006年から横浜F・マリノス担当に。12年からはウェブマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』(https://www.targma.jp/yokohama-ex/)の責任編集として密着取材を続けている。著書に『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』、構成に『中村俊輔式 サッカー観戦術』『サッカー・J2論/松井大輔』『ゴールへの道は自分自身で切り拓くものだ/山瀬功治』(発行はすべてワニブックス)がある。