首位決戦で輝いた”ミシャ・イズム” 浦和の前線トリオが導いた鮮烈な決勝ゴール
「私の愛するサッカーが出た瞬間だった」
ゴールした武藤も「本当にいいボールを落としてくれてシュートコースが見えた。練習でもあの角度からずっとやっていますし、それがイメージにつながってスムーズなシュートができて、3人の距離感も良かったと思う。練習の成果だし、本当に嬉しいですね」と、普段のトレーニングから積み上げてきたものであることを強調した。
そして、指揮官もこのゴールには喜色満面といった様子で語っている。
「私はああいうコンビネーションでの得点が、目指しているサッカーだ。私の愛するサッカーが出た瞬間だったと思う。トレーニングで繰り返してきたものが出たプレーだった。チュン(李)があのパスを出すことは分かっていたし、ゴールの予感があった」
浦和のトレーニングはゲーム形式を中心に行われるが、その次に頻繁に行われるのは3人のユニットを作ってボールを持ち運んでいくものだ。横に並んだ形、縦に段差をつけた形とさまざまなパターンを作りながら、パスの出し手、受け手、3人目の動きを体に覚え込ませていく。それはビルドアップ時の動きから、攻撃の最終局面にまで通じる。その“ミシャ・イズム”の結晶とも言うべき形から、この首位決戦を制するゴールが生まれた。
この日に森脇の位置からクサビが入る瞬間の動きも、指揮官がゲーム形式のトレーニングをストップしてでも、それぞれの動き方を指示してきたものだ。「こうすれば相手はどうにもならないだろう?」と問いかけるように、選手たちに浸透させた。
ファーストステージの天王山とも呼ばれたこの一戦の明暗を分けた一撃には、日々の積み重ねで「分かっているけど止めらない」というところまで極めたものがあった。
【了】
轡田哲朗●文 text by Tetsuro Kutsuwada
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images