葛藤、そして決断 鄭大世を現役続行に導いたモノ「泥水をすすってでも続けたい」
得点力不足に苦しんだ町田の“切り札”として期待「試合に出れば得点は取れます」
若き日の鄭大世は、「戦力外になるくらいなら引退する」「カテゴリーもJ1から落とさない」と思っていたという。ただ、36歳にして自分がその局面に立った時、「泥水をすすってでも現役を続けたい」という気持ちがこみ上げてきた。
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「家族がいて、セカンドキャリア、次の人生に移行していかないといけないから、自分一人の意志では決定できないところはありました。生活が苦しくなって、家族を我慢させるくらいまでやるべきなのかという問題もあるので。春から小学1年生になる子供の学校面のことも考えて、ピースがばちっとハマったのが町田でした。現役を続けると決めた時、6歳の子供は、『パパ、サッカーやめていいよ』と言ってましたけど(笑)。新潟で単身赴任だった分、一緒にいたいからもうサッカーやめてと。僕にとっては、家族と一緒にいれることが一番大事です」
鄭大世は昨年10月のJ2リーグ第24節で、今季加入した町田相手に途中出場からハットトリックを達成している。ランコ・ポポヴィッチ監督率いるチームに、当時どんな印象を持っていたのか。
「良い崩しをして、走って、良い選手は揃っている。ただ、前で決める選手がいないなと。実際に来てみて、印象は同じです。ボランチに良い選手が2人(佐野海舟、髙江麗央)、後ろもしっかり守れて、サイドに動ける良い選手がいる。あとは決める選手がいるかどうか。監督からは『テセには怪我をしない範囲で頑張ってほしい』と言われています。僕は出られるだけ試合に出たいですけどね(笑)」
町田は昨季、総得点数でリーグ18位タイ(41得点)と苦しみ、リーグ19位に低迷した。鄭大世は攻撃の切り札として期待されるが、「試合に出れば得点は取れます」と自信を覗かせつつも、“気持ちのバランス”を意識しているという。
「ギラギラしている性格なので、何歳になっても試合に出られなければ悔しい。『絶対に取り返してやる』『見返してやる』と思っていましたが、激しすぎるモチベーションは疲弊して長続きしないんです。今の考え方は、レギュラーで出るために死ぬほど頑張るというよりは、できることを毎日やって、ベストを尽くすこと。それは清水時代の苦労があると思います。怪我があって、やっとチャンスが巡ってきたというところでまた怪我をして。すべてそれに潰されてきた。でも、一度も気持ちは切らさなかったから、新潟みたいにチャンスが巡ってきたわけで。頑張っていたら、諦めない限りはその種がいずれ花を咲かせる時が来る。自分を責めすぎず、他人を責めすぎず、ちょうどいいモチベーションを保つのが大事です」