ドイツで急成長中の20歳MFアペルカンプ真大 1部昇格へ「創造性を期待されている」
負傷離脱した4試合でチームは未勝利、アペルカンプが昇格のキーマンに?
そう語るアペルカンプにとって、全幅の信頼を寄せてくれるレスラー監督の存在は大きい。
指揮官は「昨シーズンにトレーニングで初めてシンタを見た時に、チームマネジャーのウーベ・クラインに『すぐ新しい契約を!』と言ったんだ。自前の育成アカデミーからプロ選手を輩出するというのも大事だ。だが、彼が今プロ契約を結んでいるのは、彼自身のこれまでの取り組みが素晴らしかったからに他ならない。高いパフォーマンスレベルがあるだけではなく、同じミスを繰り返さない吸収力がある。学ぶことに貪欲でサッカー選手として賢い選手と一緒に仕事をするのは、とても楽しいことだ」と、その資質の高さとサッカーに向き合う姿勢を称えている。
8月の段階で「さすがにいきなり年間30試合も出たりすることはないと思うが」と話しておきながら、第17節終了時点ですでに14試合で起用していたのだから、その成長カーブは相当なものと言えるだろう。
「シーズン前はこんなに出られるとは思っていませんでした。正直そんなイメージはなかった。出られると信じてはいたけど、こうやってスタメンで連続で出場できるとは思っていなかったですね」(アペルカンプ)
ただ、やはり知らないところで負担は溜まっていたのだろう。第14節パーダーボルン戦(2-1)の前半に筋肉系の損傷を負ってハーフタイムに交代。幸いこの怪我自体は軽症で、1試合大事を取った後の第16節アウエ戦(3-0)では再びスタメンに復帰。ただ翌節グロイター・フュルト戦(3-3)で太もも裏を負傷し、前半28分でピッチを後にしている。
「これまでほぼ全部の試合に出ていたので、もしかしたら疲労がいっぱい溜まっていたかもしれないです。でもこれは自分の成長にとってまた新しい学習機会だと思っているので、ポジティブに見ています」
実はアペルカンプが負傷離脱してからチームは勝利がなく、直近4試合で2分2敗。2部リーグ第21節終了時で、デュッセルドルフは自動昇格となる2位ボーフムと勝ち点9差の7位と少し順位を落としている。一時は降格圏のほうが近い位置にいたことを考えると悪くはない位置かもしれないが、このままずるずると順位を下げていくことは避けたいところだ。もう少しで復帰というアペルカンプとともに、また調子を取り戻し、順位を押し上げていきたい。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。