センターフォワード不在でも点は取れる マンCが確立した画期的な「ゼロトップ」戦法
得点を量産してきたのは歴史的にもCFとは限らない
先日、公式戦の得点新記録としてニュースになっていたクリスティアーノ・ロナウドは、もともとウイングである。現在はユベントスでCFとしてプレーすることも多いが、レアル・マドリードやマンチェスター・ユナイテッドでの定位置は左サイドだった。
そのロナウドに記録を抜かれたヨーゼフ・ビカンもCFではない。チェコスロバキアのレジェンド、ビカンの記録は「759点ではなく821点なので、ロナウドはまだビカンを抜いていない」とチェコ協会は主張しているという。ビカンのポジションはCFではなく当時のインサイドフォワードだ。公式戦757得点と言われるペレ(こちらも諸説ある)もCFではなく、ビカンと同じくインサイドフォワードである。
ハンガリーのフェレンツ・プスカシュもインサイドフォワード、メッシもハーフスペースの右からプレーを始めるのが得意なのでインサイドフォワード型と言える。得点を量産するのはCFとは限らず、むしろスーパーなインサイドフォワードがいる時はそちらが主役になることもあるわけだ。
CF不在でも点は取れるとシティも証明してくれた。得点力のあるCFはいたほうがいいと思うが、優秀なCFがいないからといって嘆く必要はないのかもしれない。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。