香川に用意されていたかもしれないもう1つの未来 今でもその才能に惚れ込むサー・アレックスの責任

 

香川の活躍はブンデスリーガ報道が少ない英国でも大々的に報道

 

 勝負に“たられば”は禁物だというは分かっているが、しかしその反面、人間は「もしも」という可能性を探求したがる生き物でもある。

 そこで今回、筆者の胸に生じたもしもは、あの偉大なサー・アレックス・ファーガソンが2013年5月に勇退しなければ、香川真司のマンチェスター・Uでのキャリアはどうなっていただろうか、というものだ。

 9月13日、マンチェスター・Uでの夢が破れ、古巣ドルトムントへ帰って行った香川真司が、その2年間の鬱憤を晴らすかのように2得点にからんだ。

 先制点は、香川が放った“これぞ起点プレー”というべき縦パスが、ラムスのゴールをアシストした左サイドからのクロスを生み出した。まさしくゴールを「クリエイトした」パスだった。

 そしてチームの2点目になった香川のゴール。昨季、マンチェスター・Uで無得点に終ったシーズンの憂うつを吹き飛ばすかのように、右足を小さく鋭く振り抜き、左サイドから持ち前の正確さを発揮したシュートを放ってきっちりと決めた。セレブレーションでは、照れてはにかんだような表情を見せたが、アッパーカットを繰り出すように拳を下から上に突き上げ、宙に舞った。

 そんな香川のゴールは、翌日14日の英国でも大きな話題になった。

 ちなみに各紙の見出しはこんな感じだった。「香川、古巣へのハッピー・リターン」(英高級紙ガーディアン)、「香川、ゴールで夢のドルトムント復帰」(英大衆紙デイリー・メール)、「マンUで拒絶された香川の復帰デビュー戦ゴール」(デイリー・エクスプレス)。

 また英大衆紙デイリー・ミラーは、同日付の電子版で「見ろ! これがマンUで戦力外と評価された香川のゴールだ」と題し、日本代表MFの見事な復帰戦ゴールの動画を掲載した。

 通常英国では、例えば優勝決定など、よほどのことがない限り、ブンデスリーガ報道は見かけない。しかもこの日は、プレミア第4節の熱戦が8試合も繰り広げられた翌日だった。ところがそれにも関わらず、香川のゴールは英メディアの大きな注目を集めた。

 その一連の報道の中で、筆者の関心を一点に引きつけ、今回のコラムを書こうと背中を押したのが、英大衆紙ザ・サンの記事だった。

「Fergie admits he didn’t get best out of Kagawa」(ファーギー、香川のベストを引き出せなかったと認める)という見出しを見た瞬間、背中がぞくっとするような興奮を覚えた。

 ご存知の通り“ファーギー”は元マンチェスター・U監督のサー・アレックス・ファーガソンの愛称である。この見出しを見る限り、ファーガソンが香川について何かしゃべったことは違いない。しかし何を話したのか。

 一気に記事を読んだ。すると、それはクロップの証言がもとになってはいたが、確かにファーガソン監督が自らの言葉で香川の移籍を語っていた。

page1 page2 page3

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング