J1昇格の夢へ 町田クラブナビゲーター李漢宰、新加入FW鄭大世へ託した“魂のバトン”
【李漢宰インタビュー|Vol.2】J1昇格の思いを継ぐかのように同胞の鄭大世が加入
在日サッカー選手の中で最長となるプロ生活20年を駆け抜けたMF李漢宰は、2020年シーズン限りで現役引退を決断した。7年間を過ごしたJ2のFC町田ゼルビアで、「クラブナビゲーター」としてセカンドキャリアを歩み始めるなか、まるで李漢宰の意志を継ぐかのように、元北朝鮮代表で1学年下のFW鄭大世が加入。「先頭に立ってJ1昇格へ引っ張っていってもらいたい」とエールを送っている。
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昨年12月25日に李漢宰が現役引退を発表した11日後、北朝鮮代表として戦った経験を持ち、熱くソウルフルなプレーを信条とするFW鄭大世の完全移籍が決まった。運命めいた巡り合わせに興奮を隠せないファンも多かったが、李漢宰にとっては“予言”が現実となった瞬間だったという。
「実は、『もしかしたら、テセが来るかもよ』となんの根拠もなく選手たちに言っていたんです(笑)。それがまさか現実になるとは思っていなかったので、正直驚きました。移籍決定後、『FC町田ゼルビアに加入します』と報告をもらった時、『なぜ俺が(現役で)いる時に来てくれないんだ』『一緒にやりたかったのに』という思いはありましたね(笑)」
奇しくも北朝鮮代表ではキャップを刻んだ時期が異なり、Jリーグでも同じチームでプレーすることはなかった2人。ピッチ上の共演こそ叶わなかったとはいえ、李漢宰はクラブスタッフとしてFC町田ゼルビアに携わっていくことが決まっており、「同じ目標に向かって歩んで行けることを非常に嬉しく思います」と思いを語る。
「テセは(2010年の南アフリカ)ワールドカップにも出場しているし、歩んできたキャリアやこれまでの経験を考えれば、僕の代わりに来たなんて言うのは申し訳ない。非常に気持ちが強くてクラブのために戦ってくれる選手なので、僕が成し遂げられなかったJ1昇格の目標を受け継いでもらいたいな、と。きっと先頭に立ってチームを引っ張っていってくれるはずです」
同志にバトンを託した李漢宰は、“J1クラブへの案内人”として、全身全霊を注いだ愛するFC町田ゼルビアを支えていく。
(文内敬称略)
※取材はビデオ会議アプリ「Zoom」を使用して実施。
[PROFILE]
李漢宰(リ・ハンジェ)/1982年6月27日生まれ、岡山県出身。広島―札幌―岐阜―町田。J1通算92試合・5得点、J2通算194試合・5得点、J3通算63試合・5得点、北朝鮮代表通算7試合・1得点。2001年、在日朝鮮人3世選手として初めて朝鮮学校からダイレクトでJリーグ入りし、闘争心あふれるプレーで中盤を支えてきた“魂の漢”。2020年シーズン限りで現役を引退し、今年から“J1クラブへの案内人”として町田のクラブナビゲーターを務める。
(FOOTBALL ZONE編集部・小田智史 / Tomofumi Oda)