渡欧10年の日本人MF、コロナ禍のルーマニアで奔走 “村クラブ”救済へ全力を注ぐ理由
海外挑戦10年、川越が歩んだ波乱万丈のキャリア
川越は東京の国士舘高を中退し、16歳で単身渡英。「このままここにいてもプロにはなれないと感じ、何かを変えなきゃいけないと思った」という決心で日本を飛び出した。英国で4クラブ、ルーマニアで5クラブを渡り歩いた後、2019年に当時4部だったエゼリシュの目に止まり、熱烈なオファーを受けて加入した。21年で海外に渡って10年目を迎える。
ルーマニアでは労働ビザが下りずにプレーできなかったり、クラブが消滅するなどの苦難を経験してきた。そうしたなかで人口1400人という小さな村を本拠地とするエゼリシュは、両手を広げて川越を迎え入れてくれた。19-20シーズン、川越は主力選手として13得点を決める活躍で、クラブは3部昇格を果たした。
昨年は怪我に悩まされ、チームドクターすらいない環境で完全復帰までには時間を要した。決して恵まれた環境とは言えないなかで、助っ人外国人である川越がクラブのために一大プロジェクトを立ち上げたのは、ひとえに“恩返し”の思いだという。
「もともとはエゼリシュの近くにある別のチームでビザを取ってもらう話がありました。ですが、そのチームとエゼリシュが練習試合をした時に、エゼリシュの監督が僕に目をつけてくれたんです。『僕たちは(当時)3部リーグに上がりたい』と熱烈にオファーをくれ、会長とも直接話したうえで信用して行ってみようと決めました。ビザの手続きもなかなか大変な作業だったと思います。そうした気持ちに応え、クラブへの恩返しをしたいと思っています」