トップ下香川が示した“新スタイル”への兆し インターセプト8回とキーパス1本の裏に潜むもの
香川がアンフィールドで示した真価
守備のチャレンジ数は7回対10回、インターセプトの数は3回対8回とかなりの違いが見て取れた。シリア戦は5-0と、アンフィールドでのリバプール戦は3-4で試合の拮抗感が異なるから当然だ、という見方もあるかもしれないが、日本代表におけるインターセプト3回というのはチームで出場選手14名中下から3番目に低い数字だ。
一方、ドルトムントでの8回は出場14名中3番目に高い数字だ。対戦相手によってデータの絶対値が異なるのは当然だが、その試合における役割、タスクという点でデータを見ることも重要だ。アンフィールドで香川はFWオーバメヤンとともにファーストディフェンダーとして高い機能性を誇っていた。相手のパスコースを限定し、競り合いでも屈強なリバプールの主力相手に互角以上の戦いを見せていた。チームも香川交代後に2失点を喫し、衝撃的な逆転負けを喫してしまった。
この日の香川をこれらのデータで見ていくと、攻撃面ではやや物足りない。しかしそれは香川の良さも熟知している敵将の「対策」の賜物かもしれない。しかし77分までプレーし、その間ドルトムントがリードをキープできたのは、守備で貢献した香川の変化かもしれない。
日本代表の積年の課題であった、「引いた相手をどう崩すか」という命題に対し、ハリルジャパンはここ2試合続けて5得点を挙げたことから、ある程度答えが見え始めた兆しを感じる。
それはポゼッションか、カウンターかというスタイル論ではなく、レスタ―の岡崎慎司、ミランの本田圭佑、インテルの長友佑都という、日本からの助っ人として世界で戦う経験を積んできた選手の持ち味を、代表という器でいかに最大限に生かすかが命題になるだろう。今のところ、その持ち味はアジアの相手に大きく発揮できている。しかし、アンフィールドでの香川の変化に見て取れるように、欧州組の本当の持ち味は強敵相手に自分たちのサッカーをさせてもらえない時にこそ、その真骨頂が発揮されるのかもしれない。
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サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images