トップ下香川が示した“新スタイル”への兆し インターセプト8回とキーパス1本の裏に潜むもの
シリア戦とELで対照的な攻守のデータ
日本代表としてプレーする背番号10の香川、そしてドルトムントの一員として世界の舞台で戦う「23番・KAGAWA」、それぞれのプレーをデータで比較してみたい。
3月29日に行われた日本代表対シリア代表で香川はフル出場をしたが、リパブール戦における出場時間は77分だったため、データを90分間に換算した。
アジアの代表チームが欧州でプレーする選手を数多く擁する日本代表と戦う際、まずは守る、そしてチャンスがあれば攻めるというように、いかに大量失点による敗戦リスクを減らすかという戦い方を選ぶのは定石だ。それに対して日本は引いた相手、ゴール前に限られたスペースしかない状況をいかに打開するかが求められる。現在ブンデスリーガにおいて、バイエルン・ミュンヘンに次いで2位に位置するドルトムントは、攻守の切り替えの速さ、特に奪った後の縦の速さと人数のかけ方に特徴のあるチームだ。そういう意味では、日本代表がこれまで志向していたポゼッションスタイルから上積みしようとしている部分をすでに持っているチームとも言える。
まず、試合を通したすべてのアクション数は130回対117回とさほど大きな差はない。
しかし、アクションの中で攻撃に占める割合が日本代表での90%に対してドルトムントでは64%だった。パスの成功率は79%対75%とさほど大きな差はないものの、パス数は77本対42本と1.8倍もの開きがあった。日本代表では引いた相手に対しても、得点機会を演出するキーパスが9本とパス全体の11.4%がチャンスメイクのパスだったのに対し、トップ下で先発したリバプール戦ではわずか1本、2.4%だった。シリア戦における香川の攻撃参加回数は58回で、日本代表の中でトップの回数だった。一方、リバプール戦においては28回。先発11名中これより低いデータはGKヴァイデンフェラーを含めて3人だけだった。最初に見た全体のアクションのうち攻撃に占める割合が90%対64%という意味は、攻撃への貢献率が低いということだけではなく、守備的な貢献度の高さも意味する。