「勉強したい」と向上心を失わず

　そして、20日のシドニーFCとのアウェーゲームに向けて、飛行機での移動を前に「ジョコビッチの本も買ったから、勉強したい。どんなものを食べているか」と、テニス界のトッププレイヤーであるノバク・ジョコビッチの著書である『ジョコビッチの生まれ変わる食事』を読んで学びたいとも語った。こうした貪欲な姿勢もまた、体が資本と言われるプロサッカー選手としての生活を支えている。

　それでも、「チームが勝つために自分ができることをやればいい。チームの勝利が全てなので、それ以外のことは考えない。それはこの先も変わらない」と、あくまでもチームのためにプレーすることを強調する。

　個性派集団の浦和において、誰もが一目を置くキャプテン。自らが休まず、不平を言わず、戦い続ける姿勢を見せることでチームはまとまっていく。普段は後ろから支えるようなタイプのキャプテンだが、チームが苦境に陥れば先頭に立つことも厭わない。

　常にチームの黒子役として戦い続けてきた男に、一つの勲章が与えられた。これからも、「すべてはチームのために」という思いの下に、阿部は走り続けていく。

【了】

轡田哲朗●文　text by Tetsuro Kutsuwada

ゲッティイメージズ●写真　photo by Getty Images