プレミアでの衝突はなぜ起きたのか ドイツの日本人GKコーチが語る“判断力”の重要性
「今だけを良くするトレーニングはしない」
――U-14、15はこれからユースに上がっていく世代ということで、この段階で基礎を固めておく必要があるんですね。
「はい。GKは『自分がなぜそこに立っているのか』を、自分の言葉で答えられるようにならなければいけません。それができなければ、練習でも試合でも同じミスを繰り返してしまいます。ミスが起きた理由を選手が自分で答えられる力、そして“なぜならば”をちゃんと教えられるコーチの両方が必要なんです。
それから、私は選手に良くなかったプレーのビデオを見せ、“なぜならば”を説明した後には、同じようなシチュエーションでいいプレーをしていた選手のビデオを見せるようにしています。私はドイツ語がまだまだ完璧でない部分もありますし、言葉と映像でよりしっかりと伝えられるようにしているんです」
――最後に育成年代のGKを指導するうえで、心がけていることがあれば教えて下さい。
「選手には単にテーマを与えるだけでなく、『選手の個性にあった指導を行う』ことを心がけています。要するに“型にはめた指導はしない”ということですね。練習のための練習ではなく、選手が成長するために個人に合わせたものを与えるということです。
上手くいかない場面があったとしても、今だけを良くするためのトレーニングはしない。長い目で見た時に、大事なことはその選手がユースに上がった時に学んだことを発揮できるようになることです。目先のことだけを見るのではなく、先のことをしっかりと考えて我慢してやることですね」
<PROFILE>
松岡裕三郎(まつおか・ゆうさぶろう)/1984年10月8日生まれ。鹿児島の名門・鹿児島実業高で全国高校サッカー選手権大会に2度出場。夏のインターハイでは大会優秀GKにも選ばれた。同志社大に進学し、卒業後に単身ドイツへ。独7部フェルバッハで選手としてプレーした後、指導者に転身。2017年6月にUEFA B級ライセンス相当の修了書を取得。シュツットガルト・キッカーズのU-15、16のGKコーチを経て、現在はドイツ1部VfBシュツットガルトのU-14、15でGKコーチを務めている。