プレミアでの衝突はなぜ起きたのか ドイツの日本人GKコーチが語る“判断力”の重要性
GKに求められる判断力、それを身につけるためには…
――松岡さんは育成年代のGKを指導されていますが、こうした一瞬の判断力を養うためにはどのような指導を行っているのですか?
「やはりまずは試合を重ねることが重要です。そこにコーチがビデオを見せてフィードバックを与えていきます。実際の映像を見せることで選手たちの頭には入りやすく、それを繰り返して修正していくことがメインになってきます。
ただし、毎回ビデオを見て『こうしたほうがいい』と伝えているだけでは限界があると思います。なので、私は選手たちに“なぜならば”ということを付け加えて説明するようにしています」
――ミスが起きた理由を、より明確に説明するということですか?
「そうですね。『なぜ飛び出す必要があるのか』『なぜゴールディフェンスに戻るほうがいいのか』といったことを理論的に説明しています。そのためには当然、GKコーチ自身がしっかりと戦術を理解していなければいけません。
たとえば、ゴールから飛び出すのか飛び出さないかの判断をする際には、味方がどこにいるのか、ボールはどこへ向かっているのかなど様々な要素から判断しなければいけません。先ほどのピックフォードのケースもそうです。状況から判断して、明確な理由を説明してあげることがとても重要なんです。そういった反復によって、選手もプレーの原則を理解していくことができます」
――育成年代では、そうした状況判断がまだ甘い部分がありますか?
「ドイツではU-13までは9対9で試合を行い、ゴールも少し小さなものを使っています。U-14、15からプロと同じサイズのピッチやゴールの大きさに変わるので、初めはポジショニングや判断において感覚のズレが生じやすく、粗さもあります。その部分でしっかりとコーチングをかけて修正していきます。ユースに上がるまでに戦術的な部分をしっかりと理解させておく必要があり、それを身につけさせることが私たちの仕事なんです」