「あの舞台で結果を出すために…」 日本のエース香川真司が取り組む”準備”とは
苦境に立たされた時に何をすべきかを覚えた
――順調に見えるシーズンの中でも、苦しんだ時期はあったのでしょうか?
「11月のシンガポール、カンボジアとの代表戦の後に行われた(ブンデスリーガの)ハンブルガーSV戦とシュツットガルト戦の頃は、ちょっと苦しかったですね」
――時差だけではなく、東南アジアの高温多湿な環境は冬のドイツとは正反対のものです。
「体のコンディションは別に悪くはなかったんです。ただ、時差ボケでうまく寝付けないことがあり、そういうところからくるストレスからも、試合に集中できていなかった部分はありました」
――あの2試合では先発したものの、早々に交代を命じられていましたね?
「『やってやるぞ』という気持ちを、あの2試合は全く出せませんでした。ピッチに入ってからもイメージが湧かなかったですし、うまく集中できずに、ただ走っている感じでした」
――実際、その次のヴォルフスブルク戦では今シーズンのリーグ戦では初めてスタメンから外れてしまいました。
「自分が乗り切れていなかったのは監督も見抜いていたから外されたんだと思います。確かに、ハンブルガーSV戦は長距離移動から中2日での試合で難しい部分はあったとは思うのですが、シュツットガルト戦を含めた2試合ですごく危機感を覚えていました」
――しかし、先発落ちしたヴォルフスブルク戦では後半途中から出場。後半アディショナルタイムに決勝ゴールを決めました。その前の2週間の反省をどのように生かしたのでしょうか?
「試合のことは置いておいて、まずは1日、1日、良いトレーニングをしようと心掛けました。もちろん、最初のうちは『やりたくないな』という気持ちも正直ありましたし、負けそうな時もありました。でも、『負けたらあかん。やり続けるしかない。次の試合で結果を残すんだ』と考えて練習に取り組んでいました」
――地元メディアからはヴォルフスブルク戦の前にはスタメン落ちを予想する声も上がっていましたよね?
「ただ、気持ちを奮い立たせてやった甲斐もあって、ヴォルフスブルク戦の前日の練習ですごくフィーリングが良くて、良い練習もできていたんです。だから、スタメンで出られる可能性もなくはないのかなと、淡い気持ちを持ちつつ試合日を迎えたのですが……」
――そうした中でのスタメン落ち。試合当日の心の準備は難しかったのでは?
「でも、それはしょうがないことなので、前半からベンチで試合の流れをしっかり見ていて、後半になれば絶対、出番は来ると思っていたから、そこで結果を残すためのイメージを持ち、体と心の準備をしておこうと切り替えていました。結果論かもしれないですけど、最後には勝ち越しのゴールを決めることができました。そうやってメンタリティーを変えていくことによって、ピッチの上でのパフォーマンスもだんだんと変わっていくことを感じられたし、自信も生まれました。もし次に同じようなシチュエーションになっても、あの時のことを思い出しながらまたやれるんじゃないかなと思っています。そういう意味でも、良い経験になりましたね」