世界のFKキッカー中村俊輔の左足に秘められた真実  元代表守護神が明かす「インパクトの瞬間」の凄み

「曲げるにしても落とすにしても同じ蹴り方」

 そして、中村の異能ぶりを象徴するのは独特なキックフォームのインパクトの瞬間に秘められているという。

「GKとして本当に厄介だったのは、俊輔はボールを曲げるにしろ落とすにしろ、インパクトまではまったく同じ蹴り方なんですよね。もちろん自分自身、何度も受けていけば、身体が反応できるようにはなったんですが、そこに先ほど話した俊輔のイメージ通りのキックが合わさると、“わかっていても追いつかない”レベルになるんです」

 サッカーとは別競技になるが、野球でもストレートと変化球を同じフォームで投げ分けるピッチャーは“球持ち”が良く、打ちづらいと言われる。それと同様に中村のFKフォームは、最後まで軌道が読めないGK泣かせのものになっているという。

 そして土肥氏はテクニカルな部分だけでなく、中村の高いプロフェッショナル意識にも言及した。

「今年の沖縄キャンプでマリノスと練習試合をした時のことです。試合後、若手選手が休息している一方で、俊輔だけはキックの練習で自分の感覚を確かめていました。これこそが彼らしい継続する姿勢だと思います」

 中村は卓越した技術と不断の努力で、Jリーグ通算最多となる22本の直接FKでのゴール記録を更新している。またセルティック所属時の2006-07シーズン、UEFAチャンピオンズリーグのマンチェスター・ユナイテッド戦で直接FKを叩き込むなど、数々の伝説を築き上げた。37歳となっても衰えぬ向上心を持つ天才レフティーは、さらなるスーパーゴールで世界を震撼させてくれるはずだ。

【了】

茂野聡士●文 text by Satoshi Shigeno

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

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