世界のFKキッカー中村俊輔の左足に秘められた真実 元代表守護神が明かす「インパクトの瞬間」の凄み
元日本代表の同僚で東京Vの土肥GKコーチが語るレフティーの凄み
横浜F・マリノスの元日本代表MF中村俊輔は37歳にして、圧倒的なテクニックと宝刀の直接FKを武器に眩いばかりの活躍を見せている。4月2日のG大阪戦では今季2点目となる直接FKを決め、自らが持つJ1でのFK得点記録を通算22ゴールへと更新したばかりだが、FKを決めるたびに欧州でニュースとして報じられる。イングランドメディアでは天才リオネル・メッシを抜き、現役のFKランク4位に選出されるなど、その実力は欧州でも絶賛されている。
黄金の左足から繰り出させる一撃は他の選手のFKキッカーとどこが違うのか。日本代表のドイツW杯時代の同僚で、合宿中などで数えきれないほど中村のFKを受けてきたかつての“相棒”がレフティーの凄みについて語っている。
「俊輔の場合、インパクトまではまったく同じ蹴り方で、そこから色々なボールを蹴り分けてくる。分かっていても追いつかないシュートが来る」
現在東京ヴェルディのGKコーチを務める土肥洋一氏がこう語った。土肥氏は大津高から1992年に日立製作所(現柏レイソル)に入団。 00年に加入したFC東京で長年守護神を務め、08年に東京Vに移籍して以降も正GKの座を守った。12年限りで現役を引退し、育成組織を経た後に14年途中からGKコーチに就任している。またジーコジャパンで招集され続け、優勝を果たした04年アジアカップ、そして06年のドイツワールドカップ日本代表にも名を連ねた。
「ガンバ戦のフリーキックはすごいの一言ですよね、あれだけ良くない流れを左足一本で変えて、すべてを持っていってしまった。」
土肥氏はJ1第5節ガンバ大阪戦で中村が挙げたスーパーゴールを切り出し、“FK伝説”を語り始めた。「日本代表のトレーニングでのことですが、僕たちGKがボールを受けていて『さすがにいいキックを蹴るな』と思っていても、俊輔本人は『当たっているところがちょっとだけ違う』って納得していない表情を浮かべていたんですよ」
代表でもトレーニングが終わると中村はいつも居残り練習を敢行した。土肥氏らGKを相手に約10~15分間にわたってFKの修練に励んでいたという。その時に土肥氏が体感した凄みについて、こう説明する。
「最初は『何を言っているんだコイツは? こんなにいいシュートを打っているのに』と思っていたんですが、シュート練習に付き合っていると、彼が本当にイメージした通りの場所で蹴った時は、球質が明らかに違った。具体的に言うとボールの伸びが増して、変化する角度がより鋭くなったんです」
中村が首を傾げる一撃でもゴールを奪うに十分なクオリティを誇る。だが、ボールをジャストミートした際の威力は別次元。世界屈指の魔球と化すという。